『デスノート』『デスノート the Last name』(06年)、スピンオフ作『L change the WorLd』(08年)で大成功を収めた実写『デスノート』シリーズ。誕生から10年の時を経て、映画『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)で、まさかの続編として復活を遂げる。果たして、その"最終ページ"には一体何が書き込まれたのか。
マイナビニュースでは「独占スクープ 映画『デスノート』の最終ページ」と銘打ち、すべての作品を企画・プロデュースしてきた日本テレビ・佐藤貴博プロデューサーの「今だから語れる」証言を中心に、全20回にわたってその歴史を掘り下げていく。インタビューは合計約5時間、4万字近くにも及んだ。第18回は「佐藤Pまさかの異動!?」とHulu配信中の『デスノート NEW GENERATION』にまつわる秘話。
「映画」から「動画」の世界へ
――佐藤さんは映画事業部からインターネット事業部に異動になったと聞きました。
今年の6月1日付けで異動になりました。その部署名の通り、日本テレビのインターネットに関わること全てに携わる部署ですが、その中でも僕は「動画配信」にまつわる全てのマネージャーというポジションに就きました。もちろんHuluも管轄します。今回の新作ではHuluオリジナルドラマを制作して既に絶賛配信中ですが、それはたまたまです(笑)。Huluとの連動は続編映画企画の当初から考えて進めていたことなので。
そのオリジナルドラマは、映画の主要キャスト3人それぞれを主人公として描き出す3つのストーリー。捜査官・三島(東出昌大)が夜神総一郎の志を継いで「デスノート対策チーム」のエースとなるまでを描く『三島篇~新生』。Lの後継者・竜崎(池松壮亮)が「デスノート」捜査に関わるきっかけ、そして「Lを超えよう」となぜ思ったのかを描く『竜崎篇~遺志』、サイバーテロリスト・紫苑(菅田将暉)がキラを信奉する理由、そして初めてデスノートを使用する「その時」を描く『紫苑篇~狂信』。
3本のドラマが映画に繋がっていくのはもちろんですが、それぞれのストーリーがリンクし合っていますので、映画を観る前だけでなく、観た後にもいろんな発見があって楽しめると思います。
デスノート10年目の総決算
――スピンオフをHulu配信オリジナルドラマとして制作した狙いとは?
2006年の前作は、そもそもが二部作連続公開という、昨今の連続公開の先駆け的な試みをしていましたし、後編公開前に掟破りの前編を地上波放送してしまうなど、チーム「デスノート」はかなり挑戦的な企画を実行してきました。10年後の今回も、チーム「デスノート」ならではの「挑戦」的なことをやりたいと思い、10年前にはなかった「動画配信」に取り組んでみました。日テレがHuluを買収して3年。日テレが一番力を入れている部門でもあるので、Huluで何かを展開することが、もっとも日テレを動かすことができるので、よりプロモーションを大きくできる。そういった意味でも、Huluといい形の連動が出来たと思っています。
もちろん強引に進めた訳ではなく、Huluとしても「デスノート」というタイトルの強さを理解していて、すぐにコラボは決定しました。さらに、旧作映画二部作に加えて、スピンオフ映画、連続アニメ、連続ドラマといわゆる「ストックコンテンツ」も豊富に揃っている。この「ストックコンテンツ」をHuluだけでなく、あらゆるメディアで展開していくことで、「デスノート」認知の拡大につながり、もちろん売上も上がるという、「デスノートワールド」で積み上げてきたものの総決算という10年目にふさわしい展開になったと思います。
――Huluオリジナルドラマが3話の前日譚になったのは?
Huluとしては、1本よりも複数本あった方がありがたいという希望を受けて、主要キャスト3人それぞれの話を作ろうと僕が骨子を作りました。本当は、映画本編撮影と一緒にオリジナルドラマも撮れれば一番効率的なのですが、もう映画自体のスケジュールがイッパイイッパイになってしまって。とにかくまずは映画を撮り終えることに集中して、改めてキャスト・スタッフのスケジュールを探って、映画撮影後の3~4月に脚本を作って、5月に撮影しました。
――いろいろな映画につながるアイテムやストーリーが詰まっていたので、映画と並行して撮られていたかと思っていました。
いや、それは逆に映画を撮り終えた後に脚本を作ったからこそ、いろんな補完やネタを詰め込めたんです。ただし、ものすごくタイトなスケジュールだったので、現場スタッフからは怒られました(笑)。本当はもっとゆったり撮ることもできたのですが、(佐藤)信介監督がキャストよりも忙しくて(笑)。福士蒼汰さん主演の『BLEACH』(18年公開)の撮影が控えていたんです。
スピンオフは別の監督が撮ることも多いですが、信介監督は「自分で撮りたい」と。もちろん、信介監督に撮ってもらった方が、作品に統一感も生まれますし、何より信介監督はもともと自主映画の人なので、機動力や工夫が必要なショートフィルムも得意だし大好きなんですよね。信介監督のスケジュールはタイトでしたが、その熱い思いに応えることで、映画本編と同じキャスト、同じ監督という、昨今のスピンオフでは実現していない最高の座組みで臨むことが出来ました。
なぜ紫苑篇で強烈メッセージ?
――三島と竜崎の回は、ポテチやひょっとこお面といったおなじみアイテムを取り入れるなど、全体としては緊張感に溢れる重厚なドラマでありながら、遊び心を感じました。特に紫苑の回には強烈なメッセージが。まさに「罪と罰」というか。過去の罪を償った人間は裁かれるべきか否かという。
はい、紫苑篇が最終話なので、「デスノート」らしいテーマで締めくくろうとは思っていました。でも、あそこまで重くするつもりはなかったんですが(笑)。脚本打ち合わせを重ねる中で、加速していった感じなんです。最初は紫苑が、善悪ではなくただ「犯罪者」を殺していくという話でした。それも過激なのですが、ヒリヒリ感はない。
その時点では、紫苑にも犯罪者にも観客が感情移入するポイントがなかったから。そこで感情移入するポイントを作った上で、それを裏切ろうと脚本の真野さんにオーダーを出しました。それによって、より紫苑が一線を踏み越えてしまう狂気の部分を描くことが出来たと思います。一体、何が正義で悪なのか。観る人の信条や心情で変化していくものだと思いますし、人間のその揺らぎこそが『デスノート』の真髄だと思います。
■プロフィール
佐藤貴博(さとう・たかひろ)
1970年4月26日生まれ。山梨県出身。1994年、日本テレビに入社。営業職を経て、2003年に念願の映画事業部に異動する。映画プロデューサーとして、『デスノート』シリーズ、『GANTZ』シリーズ、『桐島、部活やめるってよ』などヒット作話題作を数多く手がける。今年公開作品は、『デスノート Light up the NEW world』(10月29日公開)、『海賊とよばれた男』(12月10日公開)。
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