バッテリマネジメントは鉛蓄電池、リチウムイオン2次電池など今後ますます重要になる。普及が拡大するリチウムイオン電池だけではない。従来の鉛バッテリでもマネジメントを正確に行うことで、バッテリの寿命を伸ばせる。パナソニックはこのほど、クルマ用の鉛バッテリの寿命を診断・判定するユニット「ライフ・ウィンク」の適用範囲を広げた。

図1 12Vの鉛蓄電池対象車を広げた新「ライフ・ウィンク」

これまでは、カーバッテリはいつも「悪者扱い」を受けてきた。エンジンが始動しにくい、エンジンがかからない、となると決まってバッテリの寿命だ、と素人判断していたことが多かった。しかし、バッテリの電圧が一時的に下がっていただけで、寿命には達せず製品としてはまだ使えるかもしれない。

あるいは、エンジンを停止したまま車内のランプを点けっぱなしにしていたとか、車両系の異常によって電力供給が不足するといった事態でもバッテリの電荷を使ってしまうことがある。

バッテリにつなぐだけでバッテリの状態をモニタできるユニット「ライフ・ウィンク」はこれまで、一般車しか使えなかったが、今回、その対象範囲が広げられた。

具体的にはアイドリングストップ車、ディーゼル車、タクシーなどの業務車にも適用範囲を広げた。アンドリングストップ車は、信号に来るとすぐエンジンが切れるため、バッテリを始動させることが一気に増える。下手をすると走行状態よりもバッテリを始動させる時間の方が長いかもしれない。タクシーは一般車よりも止まる回数が多く、始動回数も多い。ディーゼル車は、空気を圧縮して高温になった所に燃料を噴射して燃焼させる仕組みが基本であるため、点火させる必要がない。このためバッテリの仕様目的がガソリン一般車とは違う。今回の製品は、一般車とは違うバッテリの負荷や使い方にも当てはまるようにしたものだ。

ただし、すべて12Vバッテリを搭載したクルマに限られている。12Vバッテリを2個直列接続して24Vにするシステムには対応していない。

新たなライフ・ウィンクでは、バッテリの状態を常時監視しているため、精度良く寿命を判定でき、寿命末期までバッテリを使いきることができる。このため、バッテリがまだ使える状態での無駄な交換を防ぎ、処分すべきバッテリの数を減らすことができる。つまり環境にも優しいという訳だ。

このユニットは、エンジン始動時の電圧を測定し、寿命を「良好」から「要交換」まで5段階の状態をLEDで表示する。エンジン始動直後の電圧の変化だけではなく、走行中の定常状態になった電圧も常時測定している。新品のバッテリを設置すると、最初のエンジン始動電圧とその始動時の変化、さらに走行時の電圧値を測定し、記憶しておく。その電圧曲線を基準にして、時間が経った時の電圧と比較し、寿命を判定している。

加えて、走行中にもしバッテリが供給している電気系統に異常があれば、別のLEDが点滅したり点灯したりする。ヘッドライトや室内灯などの消し忘れによって放電している時には充電不足を示すLEDが点灯する。

このユニットの想定顧客は、カーディーラーやカー用品店だ。カーディーラーは新車を購入する消費者にオプションとして取り付けサービスを提供できる。もちろん、カー用品店でも一般客に販売する。ディーラーやカー用品店へは、バッテリの状態の測定値をもっと詳細に解析するためのバッテリーアナライザの「BlueAnalyzer2」もセットで販売する(図2)。このアナライザはライフ・ウィンクに記録されたデータをLED通信で読み取り、より詳細なデータを表示し、プリントアウトする(図3)。

図2 ディーラーなどがBlueAnalyzer2を使ってライフ・ウィンクに記録されたデータを非接触で読み取り解析する

例えば、エンジンの始動レベルを時系列で表示したり、週平均の運転時間や使用、バッテリ装着後の使用期間、エンジン停止時の電圧推移、カーバッテリ使用中の温度環境などを出力する。図3の例では、初期のバッテリ電圧と温度を記録し、始動電圧の低下をプロットしている。またエンジンを停止した時の電圧の経時変化も記録している。

図3 BlueAnalyzer2でプリントアウトされた例

基本的にはマイコン、不揮発性メモリ、LED通信の簡単なデジタル変調回路などを搭載している。販売価格はオープンだが、パナソニックは2100円程度を想定している。