スマートフォンやフィーチャーフォン、PC などあらゆるデバイスへ向けて、さまざまな音楽配信サービスを展開する株式会社レコチョク。同社では、クラウド活用を会社の IT 戦略における重要項目に掲げ、2014 年から 2015 年にかけてサービス基盤と社内システムのクラウド化を推進しました。社内システム特有の要件に対し、コスト、可用性と信頼性の両立、運用工数削減、以上の点を評価し採用したのが、仮想マシンの保護やレプリケーションを自動化する障害復旧サービス Microsoft Azure Site Recovery と、Azure のクラウド統合型ストレージ StorSimple です。

プロファイル

音楽配信のリーディング カンパニーとして、スマートフォンやフィーチャーフォン、PC などさまざまなデバイスへ向け、音楽配信を中心としたコンテンツ サービスを展開する株式会社レコチョク。近年では、音楽配信のノウハウを生かした各種企業とのパートナーシップによる協業サービスも展開し、幅広い事業展開を行っています。

導入の背景とねらい
社内システムのクラウド移行に際し、コストと可用性の最適化が課題に

国内の音楽配信サービスを牽引するリーディング カンパニーである株式会社レコチョク (以下、レコチョク)。同社ではクラウド活用を IT 戦略における重要項目に掲げ、2014 年から 2015 年にかけて、音楽配信を中心としたサービスの提供基盤をクラウドに移行する取り組みが進められました。最新 J-POP、洋楽、ロック、K-POP、クラシック、JAZZ などあらゆるジャンルの楽曲やアルバムをダウンロードできる「レコチョク」や定額制聴き放題のサービス「レコチョクBest」などの、主力サービスのクラウド移行を進めているといいます。

株式会社レコチョク

これまでデータセンターでのハウジングにてサービス基盤と社内システムの運用を行っていた同社ですが、クラウド移行の主な目的は、「ビジネス環境の変化への柔軟な対応」「自然災害発生時のサービス継続」「コスト削減」にありました。サービスの提供基盤をクラウドへ移行するのと並行し、社内システムの移行先について検討フェーズに入ったのは、2014 年の 6 月。社内システムを担当する株式会社レコチョク プラットフォーム推進部 社内ITグループ グループ長 戸丸 鉄平 氏は、当時の状況について次のように振り返ります。

「サービス基盤をパブリック クラウドに全面移行することが社内で決定し、同居していた社内システムについても、移行先についての検討がはじまりました。約 5 年前にデータセンターに設置したサーバー機器が、保守期限を迎えるタイミングでしたので、移設だけではなくさまざまな角度から可能性を探ったのを覚えています。オンプレミスでの運用、パブリック クラウドへの全面移行など、あらゆる選択肢について議論したうえで、Azure を中心にしたハイブリッド クラウド構成をメインに検討を進めました」 (戸丸 氏)。

レコチョクの社内システムには、決裁ワークフローや勤怠管理、会計、ファイル サーバーといった各業務アプリケーションのほか、資産管理、システム運用管理、セキュリティ管理などの各種ツールがあります。これらのシステムは、主にパッケージ ソフトを利用し、物理環境の Windows Server 上で動作していました。Azure を中心としたハイブリッド クラウド構成で検討を進めたねらいについて、株式会社レコチョク プラットフォーム推進部 社内ITグループ 藤川 大 氏は、こう説明します。

株式会社レコチョク
プラットフォーム推進部
社内ITグループ
藤川 大 氏

株式会社レコチョク
プラットフォーム推進部
社内ITグループ
グループ長
戸丸 鉄平 氏

「Windows Server との親和性を考えると、クラウド サービスとして Azure を使うことは自然な流れでした。物理環境から仮想環境への移行がスムーズに進められますし、既存のパッケージをそのまま利用することができます。また、メールやコラボレーションの基盤として Office 365 を既に利用しており、日本マイクロソフトのクラウド サービスや、サポートに対する信頼感もありました。社内システムは事業を行ううえで重要な基盤となりますので信頼性が高く、サポートが充実していることは大きなポイントでした。しかし、重要な基盤ゆえに、即時対応可能なメンテナンス性や、実ユーザー目線でのレスポンス面を考慮すると、システムすべてをクラウドにおくという選択には懸念があったのです」 (藤川 氏)。

システム概要と導入の経緯、構築
ハイブリッド クラウド構成が実現した、コストと可用性の両立と、信頼性高い DR 対策

クラウド サービスとして Azure を採用する方向で検討を進めたものの、全面クラウド化については、前述の点を含め 2 つ課題があったといいます。

1 つは、用途ごとのシステムにおける、コストと可用性の最適化です。「サービスを無停止で稼動させる設計が理想ではありますが、社内システムにおいては活用されることの少ない冗長構成に倍以上の投資を行うのは適切かと疑問を持ちました。そこで、社内システムは無停止よりも復旧時間に着目し、全体で見た SLA を担保する考え方にたどり着きました。常時稼働するものは事務所に設置したプライベート クラウドで安価に運用し、利用するかわからない DR のしくみは従量課金であるクラウドへ配置することにより、コストと可用性を両立できるめどが立ちました。また、思わぬ収穫として、サーバーが事務所に配置されるので回線負荷が大幅に軽減されるというメリットもありました」(戸丸 氏)。

もう 1 つは、災害復旧に向けた「より信頼性の高いシステムの構築」です。従来のデータセンターでは、機器の冗長化までにとどまっており、データセンター自体の冗長化までは実施していなかったといいます。「事務所で稼動予定のサーバー群を Azure 上にレプリケーションさせるしくみが実装できれば Azure と事務所の地理的冗長構成が実現できると考え、さまざまな手法を模索していました。また、Azure 内においてもデータが多重保護されるので、災害時復旧めどが立っていない状況でも冗長構成となり、高い信頼性が見込めます」 (戸丸 氏)。

ハイブリッド クラウドの構成で検討を進めていた 2014 年 9 月に、仮想マシンの保護やレプリケーションを自動化する障害復旧サービス「Microsoft Azure Site Recovery」が新サービスとして発表されました。藤川 氏は当時の状況をこう振り返ります。

「Azure Site Recovery を利用すると、オンプレミスに社内システムを設置しておき、なんらかの障害が発生した場合には、Azure 上に自動レプリケーションされたシステムをただちに起動して事業を継続させることができます。コストを抑えた効率的な災害対策が可能になり、まさに我々が求めていたものでした。Azure は国内では東日本と西日本の 2 つのリージョンから選択ができますので、オンプレミスは東京の本社に、DR 対策は Azure の西日本データセンターにと、地理的に冗長化を行うこともできます。『これだ』という感じで、一気に話が進みました」 (藤川 氏)。

同年の 12 月には、移行先のシステムに関する概ねの構成が決定。しかしそこで、データ面でも課題が浮上したといいます。「オンプレミスの Windows Server で稼働する Hyper-V 上に、すべてのシステムを仮想化して統合。それらのバックアップ システムを、Azure Site Recovery を使って Azure 上に構築するというハイブリッド クラウド構成で概ね決定しました。しかし 2015 年 1 月から実際の構築作業に入ったのですが、オンプレミスのストレージについて、主にデータ面で課題が残ったのです」 (藤川 氏)。 戸丸 氏は、データ面での課題を、次のように説明します。「ユーザーの扱うデータ量が日増しに増えていく状況で、『もっと容量がほしい』と日々要求を受ける状況でした。またこれまでは、データセンターに設置したストレージ装置をファイル サーバーとしていたため、アクセスが WAN 経由となり『もっと速くアクセスできるようにしてほしい』という声も上がっていました」 (戸丸 氏)。

レコチョクでは、このデータ面の課題解決を模索していたのですが、その中で出会ったのが、日本マイクロソフトの提供する「StorSimple」だったといいます。

StorSimple は、SSD と HDD のハイブリッドによるアプライアンス型ストレージ製品。それと同時に、Azure ストレージ サービスなどと自動的に連携するクラウド統合型ストレージでもあります。藤川 氏は、StorSimple のメリットをこう説明します。「StorSimple を利用すると、頻繁にアクセスするデータはローカルのディスクに、古くて頻度の少ないデータはクラウドに、といったように、自動で保存場所を最適化してくれるのです。よく使う重たいデータはローカル ディスクに置いてレスポンス速度を上げたいわけですが、すべてのデータをローカル ディスクにおくにはコストがかかりすぎます。そこで、あまり使わないものについては安価なクラウドのストレージに押し出して必要な時にアクセスできるようにしておく。データをローカル ディスクにおくのかクラウド ストレージにおくのかは自動で行ってくれますから管理は不要ですし、ユーザーも 1 つのファイル サーバーとして見えていますからその存在を気にすることはまったくありません」 (藤川 氏)。

Azure Site Recovery と StorSimple の導入にあたっては、早期導入支援プログラムとハンズオン トレーニングを活用。この日本マイクロソフトの導入支援を受け、目立ったトラブルもなく、2015 年 5 月までに基盤部分の構築が完了。6 月からは順次移行、各業務システムの運用がスタートしており、技術支援によりスムーズに導入できたことを高く評価していると、戸丸 氏と藤川 氏は口をそろえます。

Azure Site Recovery による災害対策のしくみ

クラウド統合ストレージ StorSimple のしくみ

導入ソフトウェアとサービス

  • Microsoft Azure Site Recovery
  • StorSimple
  • System Center

導入メリット

  • ハイブリッド クラウド構成により、即時対応ができるメンテナンス性と、社員の業務を円滑にする高レスポンスを実現
  • 地理的な冗長化によって DR 対策の水準が向上。これらのメリットがあるシステムを、従来よりも 36% 削減したコストで運用
  • Azure をベースにしたクラウドを構築したことで、今後の社内システムの拡張性を確保

導入の効果
5 年間のトータル コストは 36% も削減。社内ユーザーからのクレームは皆無に

導入の成果として、まずトータル コストの大幅な削減が挙げられます。Azure Site Recovery と StorSimple による構成の最終決定に際し、レコチョクではコスト試算を行いましたが、それによると、従来のデータセンターをリプレースして引き続き 5 年間運用した場合と、Azure Site Recovery と StorSimple を使ったハイブリッド クラウド構成を 5 年間運用した場合では、トータルで 36% ものコスト削減効果があったといいます。

「削減された 36% のコストの中で特に大きいのは、データセンターのラック費用と回線費用です。ハイブリッド クラウド構成ではデータセンターから撤退し、渋谷のオフィス内に物理サーバー 3 台設置することで、仮想基盤上に各業務システムを統合。公開サーバーのグローバル IP にかかっていた費用も、Azure で代替することで削減しました。また、物理サーバーの台数を減らすことができたことで、各種ソフトウェアと OS のライセンス費用を圧縮できたことも大きいです。現在は業務システムごとに仮想マシンを稼働させ、System Center で集中管理しています」 (戸丸 氏)。

運用管理の手間を削減できたことも大きく、特に障害発生時における工数削減効果は大きいと藤川 氏は語ります。「障害発生時は、Azure Site Recovery で管理画面から簡単にシステムを切り替えて障害復旧を行うことができますので、工数を大きく削減できています。機器の障害も、これまではデータセンターまで赴いていたのですが、現在は実機がある社内でメンテナンスを行うことができる点も大きいです。実はレコチョクでは、ハイブリッド クラウドでの運用開始後、システムの切り替えをすでに経験しています。というのも、サーバーを設置しているオフィスは、法定点検のために年 1 回、全フロアが計画停電します。システム構築後にちょうど停電が予定されていたのですが、Azure Site Recovery のおかげで、停電時には簡単に Azure 上でシステムを稼働させることができ、復旧時には Azure 上で更新されたデータを保持したままオンプレミス環境のシステムに切り替わり、再稼働するのを確認できました。システムのリカバリがこんなに簡単にできることに、感動すら覚えました」 (藤川 氏)。

導入時には想定していなかった面でも、メリットが生まれていると藤川 氏は続けます。「Azure 上で起動したサーバーに切り替わる際に、ネットワーク設定が自動的に行われるのが地味ながら便利です。IP アドレスは Azure 上の IP レンジに自動的に変更されますが、DNS は自動的に引き継がれますので、ユーザーはシステムが切り替わったことにまったく気づきません。すべての社内システムについてこのようなサービスレベルでの提供が可能になった点は社員の利便性に大きく貢献していると思います」 (藤川 氏)。

当初構想していたレスポンス面の成果も大きく表れています。ハイブリッド クラウド構成の導入により、これまでの WAN 経由によるストレージ アクセスが、ローカルでのアクセスに変わりました。StorSimple 自体が SSD と HDD を効率的に使ってアクセス性能を高めているため、従来にくらべてアクセス性能は格段に向上することとなり、戸丸 氏は「『スピードがでない』『レスポンスが悪い』など、頻繁にあったファイル アクセスに対するクレームは、新たな運用の開始後には一切来なくなりました。インフラ提供者としては、クレームがないというのは、これ以上ない最高の評価だと考えています」と胸を張ります。

今後の展望
構築したクラウド環境を活用し、ユーザー ニーズにあわせたシステムの拡張を目指す

レコチョクでは 2015 年 11 月までに、11 あった業務システムのうち 9 つのシステムについて移行が完了し、年内にすべてのシステムの運用が開始される予定です。データの移行についても、9 月までに完了しており、今後は StorSimple や Azure で提供されるサービスを用いて、「拡張性」をテーマに活用を進めていきたいと語ります。たとえば、データについては、ユーザー利用による保存容量が増えた場合でも StorSimple で柔軟に拡張することができ、ニーズに合わせてサイジングを行うことができます。

また、今回構築したハイブリッド クラウド環境を基盤として、これまでには無かった新しいシステムの提供も予定しているといいます。「Azure の利用は今回が初めてでしたが、Azure をベースにしたクラウドを構築したことで、Azure や日本マイクロソフトが提供するほかのさまざまなサービスを利用しやすくなりました。たとえば今後、モバイル デバイスや情報セキュリティ対策への対応が必要になってきますが、そこへの Enterprise Mobility Suite の採用も検討できます。Office 365 や Active Directory などと連携し、クラウドとオンプレミスをまたがったより便利なモバイル デバイス管理、ユーザー管理ができるようになるのではと考えています」 (戸丸 氏)。

携帯電話向け音楽配信の開始以降、常に先進的で付加価値の高いサービスを展開し、新しい音楽文化の創造に貢献したレコチョク。創立から 15 年を迎え、CI (コーポレート アイデンティティ) 「人と音楽の新しい関係をデザインする。」に基づき、現在は次世代の日本の音楽マーケット創造に向け、定額制音楽配信サービス、車載用サービスや店舗向け音楽配信事業など、B to B 事業にも積極的に取り組んでいます。今回新たに構築したインフラ環境を支えに、レコチョクのチャレンジはこれからも続いていきます。

ユーザー コメント
「Azure の利用は今回が初めてでしたが、Azure をベースにしたクラウドを構築したことで、Azure や日本マイクロソフトが提供するほかのさまざまなサービスを利用しやすくなりました。たとえば今後、モバイル デバイスや情報セキュリティ対策への対応が必要になってきますが、そこへの Enterprise Mobility Suite の採用も検討できます。Office 365 や Active Directory などと連携し、クラウドとオンプレミスをまたがったより便利なモバイル デバイス管理、ユーザー管理ができるようになるのではと考えています」

株式会社レコチョク
プラットフォーム推進部 社内ITグループ グループ長 戸丸 鉄平 氏

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