こんにちは。少し春めいてきつつある気候になり、花粉症の症状が出始めた方も多いのではないでしょうか。

私は数年前まではひどい花粉症だったのですが、最近は症状が出なくなりました。「花粉症に効く!」と言われるものは標準医療、民間療法ともにいろいろやりましたが、どれが決め手で治ったのかは不明なのです…。でもこのように花粉症は治らないものではないので、諦めずにいろいろとご自身に合う対処法を探して試されるのがよいのではないでしょうか。

ただ、特に民間療法の場合は自己責任となってしまうのでよく調べて実施されるのがよいと思います。厚生労働省のホームページに「花粉症特集」というコーナーがあり、ここが一番参考になると思います。

いったいなんの話をしているんだ?ということで本題です。

これまでの連載で3D CADのテクノロジーにおける種類についていろいろとご紹介してきましたが、結局3D CADって「ヒストリー」とか「フィーチャー」とか「ダイレクト」とか、いろいろあってこんがらがるなあ…と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?そして、結局自分の業務にはどれが合っているのか、よくわからないという方もいらっしゃるでしょう。

ここで今一度、前回までお話した3D CADのさまざまな手法の種類について整理をしつつ、新しいジャンルのCADについてご紹介します。まず基本的に、3D CADはこのようにオレンジのラインとグリーンのラインに分類することができます。

モデリング手法は、フィーチャーベースとダイレクトモデリングの2つに大きく分類されており、各々の特長は大部分において相反しています。

例えばフィーチャーベースのCADは「履歴がありことによりフィーチャー間に親子関係が発生し、親の修正が子に伝わることによってシステマティックに修正できる。寸法を修正するだけでフィーチャーの形状を変更できるので効率的である」ということをアピールポイントとしていますが、ダイレクトモデリングのCADは「それらがかえって弱点であり、それらを克服できるのがダイレクトモデリングである」と主張します。

つまり、好ましくない親子関係が付いていると思い通りに修正できなかったりします。ダイレクトモデリングなら親子関係という概念がないのでそのような心配はありません。

このように、各々長所短所があります。そこで前回お話したように、最近は特にフィーチャーベース主体のCADにおいてダイレクトモデリングを部分的に取り入れるCADが増えてきています。しかしその多くはあくまでフィーチャーの考え方をきっちりと残しており、InventorもSOLIDWORKSもダイレクト編集した履歴自体が「ダイレクト編集をしたフィーチャー」として登録されます。従ってあくまで「履歴を持ったフィーチャーベースによるモデリング」という点は変わりません。

しかし最近は、本来の意味でのダイレクトモデリングとフィーチャーベースモデリングの両方を混在させられるCADが登場してきています。最近と言っても、実は、Solid EdgeやNX、つまりシーメンスPLMソフトウェア社製品が取り入れている「シンクロナス・テクノロジー」はこの方式のテクノロジーであり、先駆者であると言えると思います。このテクノロジーは、シーメンスPLMソフトウェア社のホームページによると2008年から採用しているものです。これ以降、フィーチャーベースでありながら履歴を記録しないというタイプのCADはなかなか登場しませんでしたが、オートデスク社が数年前にリリースを開始したFusion 360が実現しました。

Fusion 360は、フィーチャーベースモデリングとダイレクトモデリングを、いつでも好きなタイミングで混在させることができます。最初はダイレクトで作り始め、途中からフィーチャーベースに切り替えたり、その逆の順番で作ったりと、作りたいものに対して設計者の判断で自由に組み合わせることができます。これにより、従来の手法では作るのが困難であった形状も簡単に作ることができるようになります。

履歴のあるフィーチャーを作成

指定したフィーチャーを「基準フィーチャ」という履歴のない形状の塊に変換できる。フィーチャー作成時に設定した寸法などの条件はすべて無くなり、ただの立体になります。すべてのフィーチャーを対象にすることも、図のように一部のフィーチャーのみを対象にすることもできます。

さらに履歴を一切無くすことも可能で、「基準フィーチャ」も含めて一切の履歴がなくなります。左側にこの形状を作成した時に使用したフィーチャーの名前は表示されますが、これを使用しての修正は基本的に不可能です。

このように、Fusion 360ではフィーチャーを使用してのモデリング、ダイレクトモデリング、さらに履歴の有無も含めて自由に組み合わせることができます。

しかし、自由に使えるということは、裏を返せばどう組み合わせるかを自分で判断する力が必要になってきます。自分が作りたいものをモデリングする場合にはどうするのが適切なのか、これは設計されるご自身以外、誰にも判断できません。ですから3D CADをうまく使いこなしたいと思ったら、まず初めはフィーチャーベースとダイレクトモデリング、そして履歴の有無のメリット/デメリットをきちんと把握されることをお勧めします。

頻繁な試行錯誤、設計アイディアの検討を繰り返す業務が多い場合はダイレクトモデリング、設計変更が多い小生設計も含めた業務の場合は履歴のあるフィーチャーベースと、一般的に言われているおおまかな指標はありますが、それはあくまで一般的な分類なので、最終判断はご自身でされるのが最適です。

と言ってもあらゆるCADを買い揃えたり、体験版を手配したりするのは大変だと思います。このFusion 360はユーザー登録のみで使用でき、これらすべての手法を試すことができるCADですので、会社やお手持ちでCADが無い場合、まずはこれを使用してみるのもよいと思います。

ツールが便利になることに比例して、その便利さを使いこなすための知識やテクニックを身に付けるとエンジニアとしてとても強力な武器になると思います。ぜひ、いろいろと試してみてください。

ではまた次回をお楽しみに!

著者紹介

草野多恵
CADテクニカルアドバイザー。宇宙航空関連メーカーにて宇宙観測ロケット設計および打ち上げまでのプロセス管理業務に従事し、設計から生産技術および製造、そして検査から納品までのプロセスを習得。その後、3D CAD業界に転身し、製造業での経験をもとに、ベンダーの立場からCADの普及活動を行う。現在は独立し、ユーザーの目線に立ち、効果的なCAD導入を支援している。 著書に「今すぐ使いたい人のためのAutoCAD LT 操作のきほん」(株式会社ボーンデジタル刊)がある。