この記事では、2万人以上のリーダーと向き合ってきたエグゼクティブコーチが、現場で使える超実践的なメソッドを紹介する『チームが「まとまるリーダー」と「バラバラのリーダー」の習慣』(林健太郎/明日香出版社)から一部を抜粋してご紹介。今回のテーマは「チームがまとまるリーダーは話すときに許可をとり、バラバラのリーダーはいきなりダメ出しする。」
チームがまとまるリーダーは話すときに許可をとり、バラバラのリーダーはいきなりダメ出しする。
我が家には、「話したいときは許可をとろう」というルールがあります。ですから8歳 の娘も、毎回「父ちゃん、今、ちょっといい?」「ママ、いい?」と聞きます。
――が、実は先日、娘に叱られてしまいました。「私には『許可をとろう』って言うのに、父ちゃんは突然話しかけてくるよね」と。猛省いたしました……。
上司・部下間も同様です。部下はこちらに話しかけるとき、「今、よろしいでしょうか」と聞いてくれますね。上司も、同じ心がけを持ち、何らかのアクションを起こすときは、必ず許可を取りましょう。
コーチングではこれを「はじまりの言葉」と呼びます。部下の話を聞く場合なら、「少し、聞かせてもらっていいかな」などと伝えるのです。
はじまりの言葉を入れずに突然傾聴モードに入ると、部下にとってはなかなかの恐怖体験となります。会話の最中で突然上司が返事をしなくなり、うなずくだけになるのですから。まして、予告なしの「ダメ出し」となると、いよいよ恐怖です。たとえば……。
部下:ご相談していいですか? 今度のプレゼン資料、データの見せ方が難しくて。
上司:そうなんだ。必要なデータ自体はそろってるよね? あれだけ情報収集に時間かけたんだから、足りないものはないはず。もう時間ないしまずいよ。急いで!
こんな怖い上司になるより、次のように「はじまりの言葉」とともに傾聴しましょう。
部下:ご相談していいですか? 今度のプレゼン資料、データの見せ方が難しくて。
上司:そうなんだ。必要なデータ自体はそろってるんだよね?
部下:はい。でも……悩んでるんですよね。
上司:悩んでるんだ。ちょっと、話を聞かせてもらっていい?
部下:はい。A資料が1番いいエビデンスなんですけど、グラフ化が大変で。B資料はシンプルで印象もキャッチーなんですが、根拠が少ないと、あとの質疑応答が厳しいかと。
上司:そっかぁ、どっちも一長一短なんだ。
部下:そうなんです……あっ、そうだ! メインのスライドにはBを使って、資料巻末の参考資料としてAを添付しておくのはどうでしょう?
上司:ああ、それいいね!
部下:ありがとうございます。話したら解決しました!
「聞かせてもらっていい?」「はい」のやりとりがあると、一気にスムーズになりますね。
なお、「はじまりの言葉」と同じく「おわりの言葉」も大事です。
このとき上司は内心、「情報収集に時間がかかりすぎたよね?」と思っていたとします。
それを伝えるなら、傾聴モードを一旦終わらせ、フィードバックモードに切り替える許可取りが必要です。以下、続きを見てみましょう。
部下:ありがとうございます。話したら解決しました!
上司:よかった、よかった。あ、そうだ。私からもひとつ、いい?
部下:はい。
上司:今回、情報収集にけっこう時間がかかったよね。何か事情があったのかな。
部下:はい、時間配分を最初に決めなかったのが失敗でした。次は気を付けます!
上司:そうだったんだ。ひとつ学べたね(笑顔)。またいつでも相談してね。
このようにはじまりと終わりを締めれば万全です。そしてもう1つ、コツがあります。「~していい?」「はい」のやりとりで、確実に「はい」と言ってもらうコツです。
それは、許可取りの手前で「YES」としか返事しようのない言葉を投げかけること。
「今日は会議が多いね」「そうですね」「次は14時開始だっけ?」「はい」……の次に、「はじまるまでしばらくあるね。今、5分いい?」
と言えば、相手は流れで「はい」と答えてくれます。これを「YESセット」と言います。言いづらいことを言うときの許可取りにも便利。ぜひご活用ください。
『チームが「まとまるリーダー」と「バラバラのリーダー」の習慣』(林健太郎/明日香出版社)
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