京都大学は、日本から米国に侵入したオオハリアリの食性が侵入地で変化し、他のアリを追いやって分布を拡大していることを、日米両国での野外調査と放射性炭素分析による食物年代測定から明らかにしたと発表した。
同研究は、京都大学農学研究科の松浦健二 教授と博士課程学生の末廣亘氏、岡山大学の兵藤不二夫 准教授、琉球大学の辻瑞樹 教授、ノースカロライナ州立大学のロブ・ダン 教授、テキサスA&M大学のエドワード・バーゴ 教授らの日米共同研究グループによるもので、同研究成果は、11月3日に英国の科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
人間の活動によって、多くの生物が本来の生息場所ではない場所に持ち込まれ、在来の生物に悪影響を及ぼすことが大きな問題となっている。特にアルゼンチンアリやヒアリをはじめとする外来アリは侵入地で爆発的に増殖し、さまざまな在来生物に壊滅的な影響を与えており、大きな問題となっている。しかし、どんなアリでも侵入先で定着し、広まることができるわけではないという。侵略的外来種になりやすいアリの特徴として、近年注目されているのが食性の柔軟性で、さまざまな餌を利用でき、侵入先でより利用しやすい餌メニューに変えることができる種は、有利に繁殖できると考えられる。
日本でシロアリの捕食者として知られるオオハリアリは、頻繁にシロアリの営巣木に同居し、その毒針でシロアリをハンティングしながら生活しているが、このアリが米国に侵入し、分布を拡大しているという。同研究では、まず、原産地の日本と侵入地の米国で朽ち木に営巣するシロアリとアリの採集調査を行い、オオハリアリの米国への侵入が在来種にどのような影響を与えているかを調べた。また、安定同位体分析と放射性炭素分析により、オオハリアリの食性が原産地と侵入地で異なるかどうか調べた。その結果、米国に侵入したオオハリアリがシロアリ以外の餌も幅広く利用するように食性を変化させ、その⾷性幅の拡⼤が、さまざまな在来アリにも影響を及ぼし、在来種の種数を減らしていることが分かったということだ。
これらの結果は、外来種の生態が原産地と侵入地で変化することにより、原産地の状況からは予測できない大きなインパクトを侵入地の生態系に与え得ることを示している。この事実は、今後あらゆる生物の輸出入や外来種問題を考える上で重要な知見を与えるものだということだ。