慶應義塾大学は、未分化iPS細胞を大量培養する際に必要となる、特殊タンパク質のコーティング量を削減可能とする培養基材の開発に成功したと発表した。

同成果は、同大 理工学部機械工学科の宮田昌悟 准教授と、医学部循環器内科の福田恵一 教授、藤田淳 特任准教授、遠山周吾 特任助教、および荏原実業 計測器・医療本部の大平美智男氏、高橋秀一氏、中田英夫氏の研究グループによるもの。

同研究グループは、プラスチック製の細胞培養ディッシュ(シャーレ)の表面において、荏原実業の「EKBIO-1100」装置を使用して特定波長の紫外線(UV光)を照射し、分子構造を改質し分析することで、iPS細胞の接着、未分化維持、増殖を促進する分子構造、阻害する分子構造を明らかにした。

ヒトiPS細胞における接着基質の削減効果(マトリゲルの使用量を20% まで削減することに成功) (出所:慶応大学Webサイト)

また、これらの結果をもとに、市販の細胞培養ディッシュの表面を改質することで、マウスiPS細胞において、コーティングを必要とせず培養することを可能にした。さらに、ヒトiPS細胞においてはコーティング物質の使用量を大きく削減することに成功した。

同成果に関して研究グループは、試薬コストの低減が見込まれヒトiPS細胞培養の高効率化が期待されると説明している。なお同技術は2017年11月20日~21日に開催される「第39回 日本バイオマテリアル学会大会」にて公表予定であるという。