国立天文台(NAOJ)は、放送大学との研究チームがすばる望遠鏡で撮影したところ、遠い過去に起きた「事件」の存在が浮かび上がり、この銀河が数十億年前に別の小さな銀河を飲み込み、中心核にある超巨大ブラックホールに活を入れていたことを物語る成果を発表した。この成果は10月26日、日本天文学会「欧文研究報告」(Publications of the Astronomical Society of Japan)オンライン版で公開された。

すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ(HSC)で撮影されたメシエ77の深撮像画像(出所:NAOJニュースリリース)

メシエ77は、中心核からジェットや強烈な光を出している活動銀河として知られているが、みかけは穏やかな渦巻銀河のため、なぜ中心核が活動的なのか謎とされていた。

今回の研究チームのリーダーである放送大学の谷口義明教授は、今から20年近くも前の1999年、メシエ77のようなセイファート銀河の形成に関する理論的考察を論文にして発表した。同教授は、銀河核がガスを得て活動的になる上で、その銀河の近くにあるより小さな質量の「衛星銀河」の合体が鍵であると考えたという。

そして今回、国立天文台と放送大学の研究チームは、すばる望遠鏡の大口径と、超広視野主焦点カメラ Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム、HSC)という撮像装置を使って観測したところ、今までは淡すぎて発見できていなかったメシエ77の周辺構造が見つかり、予想通りに一見静かな孤立銀河の過去に起きた「事件」の証拠を捉えることができた。

(左)メシエ 77 周囲に新たに見つかった極めて淡い外部構造、(右)メシエ77周囲に新たに見つかった淡い構造を示した想像図(出所:NAOJニュースリリース)

銀河の明るい円盤のさらに外側に広がった淡い腕が見え、その反対側には渦巻腕とは異なるさざ波状の構造が現れた。このような構造は、他のグループが理論的に予想した衛星銀河の合体で引き起こされる親銀河円盤上の構造に類似している。さらに、親銀河のすぐ外側には、これまでの観測ではほとんど見えなかった、極めて淡いぼんやりした雲状の構造が3つ発見された。驚くべきことに、そのうちの2つは、銀河本体を取りまく直径約25万光年にも及ぶ巨大なループ状の構造の一部であることがわかった。このようなループも、衛星銀河の合体の際形成される特徴的な構造である。

これらの状況証拠から、この銀河は穏やかなうわべとは対照的に、実は数十億年もの前に、そばにあった別の小さな銀河を飲み込み、中心核にある超巨大ブラックホールに活を入れていたことを物語っている。研究チームは、このことが、メシエ77中心核活動の起源を解明する上で重要な成果であると説明している。