東北大学は10月23日、中性子星合体から発生する光は偏りが小さいことを明らかにしたと発表した。これにより、重元素が中性子合体によって作られているという結論の妥当性が高まるほか、今後同様の観測を行うことで、合体後の物質の形状や元素生成の進み方、量の解明などが進むと期待されるという。

同成果は、同大 学際科学フロンティア研究所の當真賢二 助教、イタリア国立天文台のStefano Covino氏、イギリスのレスター大学のKlaas Wiersema氏、中国の紫金山天文台のYi-ZhongFan氏らによるもの。

中性子星合体のグラフィック画像(想像図)。Credit: University of Warwick/Mark Garlick (ESO image) (出所:東北大学Webサイト)

2017年8月17日、米LIGOチームと欧VIRGOチームは、地球から約1億3000万光年離れた場所から届いた重力波を検出し、全世界に報じた。約70の望遠鏡がこの現象を観測し、その一分は、重力波の発生源からの光の検出に成功。明るさの分析を行い、中性子星の合体が金やプラチナなどの重元素を生成していることを示唆する結果を得た。

多くの研究チームが光の明るさの観測を行った中、同グループは、光の振動方向の偏りの観測を行った。その結果、大きな偏りは検出されず、全体の光量に対する偏った光量の割合は約0.5% 以下であった。もし重元素が作られている場合、それらの吸収によって偏りが小さくなることから、同成果は、中性子星の合体が重い元素の生成現場であるということと整合的なものとなる。

大きい丸点は、重力波発生源からの数日ごとの光の振動方向の偏りの度合い(偏光度)と振動方向を表す。他の青点は周囲の星の光のデータを表し、重力波発生源からの光の振動方向が顕著に偏っていないことを示している (出所:東北大学Webサイト)

また、光の振動方向の偏りは、光の明るさとは別の情報となる。中性子星合体の進み方の理論が確定していない中で、2つの独立した観測情報から同じ結論が示唆されたことは結論を強める意味で非常に重要なものとなる。

研究グループは、中性子星合体の光の振動方向の偏りは、重い元素が合体現象のどの部分で作られ、その部分がどういう形状をしているのかについても知見を与えるものであり、今後、より多くの重力波発生源から光の振動方向の偏りを明るさと合わせて観測することで、重い元素の生成現場の確定、中性子星合体現象の詳細なメカニズムの解明につながることが期待されると説明している。