日立製作所と日立オートモティブシステムズは、車両内のエンジン、トランスミッション(変速機)などの装置から構成されるパワートレインシステム内のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)と、複数のセンサーやアクチュエーターを個々につないでいるワイヤーハーネスを集約して共有化し、ネットワーク接続を可能にする、車載用の大容量直流PLC(Power Line Communication:電力線通信)技術を新たに開発したことを発表した。

同技術は、電動化車両にも応用が可能で、パワートレインシステムのワイヤーハーネスの削減により自動車の軽量化を実現し、燃費向上に貢献する。

HEV(Hybrid Electric Vehicle)をモデルとした従来の接続方法と、今回開発された新技術による接続方法の比較

今回、日立と日立オートモティブシステムズが開発した電力線通信技術は、パワートレイン統合ECUと、センサーやアクチュエーターをつなぐワイヤーハーネスのネットワーク接続を容易にする「ネットワークの自動コンフィギュレーション技術」と、大きな電流が信号を妨げないようにする「安定した通信を可能にするノイズ回避技術」から構成されている。

前者の「ネットワークの自動コンフィギュレーション技術」では、センサーとアクチュエーターの接続位置による配線抵抗の違いを検知することで、ネットワーク上の接続位置を自動で把握し、各センサーやアクチュエーターを識別することができる。そのため、ワイヤーハーネスを共有化し、ネットワーク接続することが可能となり、ワイヤーハーネスの量が削減できる。

一方、後者の「安定した通信を可能にするノイズ回避技術」では、電力線に信号が流れるタイミングで大きな電流が流れるのを回避するように、MOSFETのスイッチングのタイミングを調整する電力線通信回路を配置することで、電力線に信号が流れるタイミング前後のノイズを回避している。これにより、通信の誤り率を低減し、急峻な電流変化が発生する電力線上でも安定した通信が可能となった。

これらの技術を用いることで、パワートレイン統合ECUと各センサーおよび各アクチュエーターを接続するワイヤーハーネスの総延長を削減し、従来の接続方法と比べワイヤーハーネスの重量を約40%削減でき、自動車の軽量化に貢献する。

さらに、MOSFETをECU内ではなくセンサーやアクチュエーター側に分散配置することで、パワートレイン統合ECUの発熱を従来の接続方法よりも約60%削減し、自然冷却が可能となる。また、ネットワークの自動コンフィギュレーション技術により、センサーとアクチュエーターをECUに接続するための設定、および設計の変更が不要になるため、センサーやアクチュエーターの種類や数を変える際に、ECUの再設定や再設計を必要とせず車種展開を可能にするため、開発工程の削減にも貢献するということだ。

なお、同技術は、10月11日~13日に「大阪国際会議場で開催されている自動車技術会秋季大会」で発表される予定となっている。