日立製作所は10月2日、スマートフォンに内蔵されている加速度センサーのデータを活用し、組織の幸福感(組織活性度)を計測する技術を開発したと発表した。また、同社では組織の幸福感を高める各人の工夫が、産業・地域・国の規模で共有・活用されることで、全体の幸福感が向上し、個人にも還元されるようになるサイクル・仕組み作りをめざすコンセプトとして「Happiness Planet (ハピネスプラネット)」を始動する。

ハピネスプラネットのコンセプトイメージ

同社では、人や組織の活性度、幸福感と生産性の関係に着目し、人工知能「Hitachi AI Technology/H」と専用の名札型ウエアラブルセンサー(名札型センサー)を活用して幸福感を計測・分析する技術を2015年に開発。組織が活性化している状態を幸福感のある状態と定義し、本人が自覚しない微細な体の動きのパターンから、その人が所属している組織が活性化し、幸福な状態にあるかどうかを可視化することができるようになった。

これまで企業向けに幸福感の計測・向上を支援するサービスを提供し、AIを使ってスマートフォンアプリケーションを通じた働き方をアドバイスする実証実験などを実施。同社グループでは、名札型デバイスを装着した社員600人に対して、各人のスマホへ個別に働き方のアドバイスを送付するという実験を行った。その結果、アプリをより長く見て活用しているチームほどハピネスが向上していることがわかり、ハピネスが上昇している職場では、下降している職場に比べて翌四半期の受注予算達成率が平均27%も高くなるという結果が出たという。

今回、新コンセプト「ハピネスプラネット」の実現および普及に向け、スマートフォンに内蔵されている加速度センサーを用いて、身体運動のデータによる幸福感を計測する技術を開発。スマートフォン内蔵のセンサーは、性能や仕様が名札型センサーと異なるだけでなく、電話やメールなどで利用されている間は正常な計測ができないなどの課題があったが、スマートフォンと名札型センサーの両方で計測を行い、その関係性をAIに学習させてデータの補正を行う技術を開発することによって、スマートフォンのみで幸福感の計測が可能になった。

スマートフォンでの幸福感計測イメージ

同社では、同技術で多くのユーザーを対象に、簡易的に組織の幸福感を計測するサービスを提供。本格的に組織の分析や活性度向上支援を希望される企業には、従来型の名札型センサーを用いた対面コミュニケーションや時間の使い方の可視化、組織活性度を高める働き方のアドバイスの提示を行う。