ナノエレクトロニクス・エネルギーおよびデジタル技術の研究機関であるベルギーimecと太陽電池開発パートナーであるSolliance(オランダ・ベルギー・ドイツ3国の太陽光発電研究機関の研究共同組合)は、Energyville(ベルギー国フランダース地方の大学・研究機関による持続可能エネルギー研究協同組合)と共に、4cm2のペロブスカイト・シリコンタンデム構造モジュールを改良し、モジュール変換効率を23.9%にまで向上させることに成功したと発表した。
このレベルに達したことで、imecは従来のシリコン太陽電池より優れたモジュール・オン・セル(シリコン太陽電池の上にペロブスカイト太陽電池モジュール)積層構造を業界で初めて実現させることに成功したと述べている。
ペロブスカイト太陽電池は、さまざまな光学的および電子的特性を実現するように設計することができるため、高いエネルギー変換効率や、高い太陽光の吸収効率、安価な製造などが達成可能であるほか、シリコンセルのスペクトル吸収範囲に相補的なスペクトル範囲を吸収するようにペロブスカイト太陽電池を設計すれば、ペロブスカイト太陽電池またはモジュールを使用して、標準シリコン太陽電池の変換効率を高めることができると期待されている。
具体的には、ペロブスカイト型太陽電池またはモジュールをシリコン太陽電池の上に積み重ねることにより、30%を超える電力変換効率を達成できる可能性があり、それによって単接合シリコン太陽電池の変換効率を上回ることができるようになる。
すでにimecは、Sollianceと共同で、2016年に4端子タンデム構成のIBC(裏面コンタクト)単結晶シリコン太陽電池の上に半透明ペロブスカイトモジュールを積層した構造を発表し、4cm2の開口面積で20.2%の変換効率を達成していた。今回の研究では、前回と同じサイズのモジュール・オン・セル積層で23.9%の変換効率を達成したという。
imecの薄膜太陽電池開発グループリーダーで、SollianceのペロブスカイトPVプログラムマネージャーでもあるTom Aernouts氏は、「2つの技術革新が今回の成果のカギをにぎっている。まず1つ目は、いままでとは異なるペロブスカイト材料(CsFAPbIBr)を使用することで、4cm2の半透明ペロブスカイトモジュールの安定性を増すとともに、変換効率を15.3%に向上させた。2つ目は、モジュールの上部に反射防止テクスチャを付加することで、ペロブスカイトモジュールとシリコン太陽電池の間の屈折率整合液を追加。これにより光損失を最小限に抑える積層構造を実現した」と述べている。
また、同氏は、「ペロブスカイト/シリコン4端子タンデムは、ペロブスカイトモジュールおよびシリコン太陽電池ともに4cm2の開口面積を有しているが、このように両方の開口面積が一致する構造は、太陽電池産業における製造技術にとっては魅力的なものとなる」とも述べている。
なお、研究チームでは、今回の研究との比較のためにIBC単結晶シリコンセル(面積4cm2)の上に小さいが変換効率16.7%のなペロブスカイトセル(0.13cm2)の積層構造を作製しており、この構成では、良好なペロブスカイト層の特性により、25.3%の変換効率を得ることに成功したとも説明している。