IDC Japanは8月7日、SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)市場予測を発表した。これによると、同市場の2016~2021年の年間平均成長率は159.0%、2021年の規模は504億4000万円と急速に拡大すると予測している。

SD-WANとは、仮想化技術と冗長構成によって、拠点WANの可用性、パフォーマンス、運用管理性を向上するとともに、WAN関連のコスト削減を実現する新しい技術。

2016年の国内SD-WAN市場規模は約4億3000万円となり、海外拠点を多く持ち、先進的なテクノロジーの採用に積極的なアーリーアダプター層の企業がSD-WANに関心を示し始めてる。現在、案件の多くはPoC(Proof of Concept)の段階だが、本番環境として採用する企業も出始めているという。

2021年の国内SD-WAN市場は、市場規模504億4000万円、2016年~2021年の年間平均成長率は159.0%になると予測しており、ビジネスの変化にWANを迅速に対応させることへのニーズの高まりや、WANに接続される機器/クラウドサービスの増加によるIT部門の負担増加が、市場拡大の促進要因になると同社は想定している。

国内SD-WAN市場 ユーザー支出額予測: 2016年~2021年

また、通信事業者が提供するWANサービス市場において、新たなSD-WANサービスによる顧客獲得競争が活発化することにより、普及が加速すると考えられるという。一方、阻害要因としては、特に国内の中小拠点向けのWANソリューションとしては、すでに安価で成熟した製品/サービスが数多く供給されており、これに対してSD-WANソリューションが相対的に高価であることなどを挙げている。

しかし、このような国内環境に対応するために、比較的リーズナブルなSD-WANソリューションの提供が増え始めていると指摘。SD-WAN市場は揺籃(ようらん)期だが、これらの促進要因によって今後、急速に拡大していくと、同社では見込んでいる。

同社のコミュニケーションズ シニアマーケットアナリストである小野陽子氏は「企業の変化のスピードは速くなっている。また多様な機器がネットワークにつながるIoT(Internet of Things)を含め、デジタルトランスフォーメンション(DX)への取り組みが加速している。このような速い変化に、従来型の静的なWANの運用管理は対応できず、IT部門のネットワーク運用管理負担は増加しつつある。企業は、SD-WANという新しいネットワーク運用管理のパラダイムの導入が、こうした変化への対応を可能にする鍵であることを理解すべきである」と分析している。