九州大学は7月17日、正常な血液細胞が作られなくなる骨髄異形成症候群の患者の造血幹細胞で、FBXL5というたんぱく質の量が減少していることに着目し、同様の状態をマウスで再現したところ、造血幹細胞に鉄がたまって血液細胞を作る能力が低下することを見出したと発表した。また、このマウスを用いて造血幹細胞による鉄制御メカニズムを解明し、将来の治療応用に向けた基盤を確立したという。
同成果は、九州大学生体防御医学研究所の中山敬一主幹教授、西山正章助教、武藤義治研究員らの研究グループによるもので、英国科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。
骨髄異形成症候群では、造血幹細胞における血液細胞を供給する能力が低下し、さらに一部の患者では白血病に移行することが知られている。また、骨髄異形成症候群の患者は体に鉄がたまりやすく、それが血液細胞を供給する能力の低下をより悪化させていることが報告されていたが、具体的なメカニズムは分かっていなかった。
同研究グループは、骨髄異形成症候群の患者で造血幹細胞のFBXL5の量が低下していることと、FBXL5が欠失したマウス造血幹細胞ではIRP2というたんぱくが蓄積し、その結果、鉄がたまって強力な酸化ストレスを生じ、その結果として血液細胞を供給する能力が低下することを発見した。
これらの結果は、造血幹細胞においてIRP2を抑制することにより過剰な鉄を減らすことが、骨髄異形成症候群の治療方法となり得ることを示すものであるという。今回得られた知見により、骨髄異形成症候群の新たな治療法の開発が期待されるということだ。