理化学研究所(理研)は6月27日、試験管中で原料を加熱・冷却のどちらの操作でも形成できる超分子ポリマーの開発に成功したと発表した。

同成果は、理研創発物性科学研究センター創発ソフトマター研究グループ 宮島大吾上級研究員、ヴェンカタ・ラオ・コタギリ特別研究員、相田卓三グループディレクターらの研究グループによるもので、6月26日付けの国際科学誌「Nature Chemistry」オンライン版に掲載された。

超分子ポリマーは、非共有結合でモノマー同士を接着させることで作られる。共有結合に比べて弱い力で結合しているため、物理的な力によって超分子ポリマーの連結を解除することができ、また力を緩めることで自動的に再連結する。このような超分子ポリマーの可逆的性質は自己修復材料などさまざまな応用が可能である。しかし、一般に超分子ポリマーは熱によって分解され(脱重合)、構成するモノマーに戻ることが知られており、高温下では使用できないなど、その応用が制限されていた。

今回、同研究グループは、あるポリマーが溶けた水溶液を加熱すると、低温では水中で分散していたポリマーが、ある温度で凝集し、沈澱や不定形の集合体を形成するという現象に着目。中央のポルフィリンの周りにそれぞれ2つずつのアミド基を持つ4本の側鎖が結合したモノマー「PORcu」を作成し、同モノマーからなる1次元の超分子ポリマーを調べた。

モノマーPORcuとPORcuの超分子ポリマー (画像提供:理化学研究所)

この結果、アルコールとPORcuの濃度を適切に調整した条件下で加熱すると、バラバラだったPORcuが重合し超分子ポリマーが形成され、冷却することで再びバラバラになることが確認された。また、バラバラの状態からさらに温度を下げると超分子ポリマーが再形成されることがわかった。つまり、ある温度ではバラバラのモノマーを加熱または冷却することで重合が進行する超分子ポリマーを作製することができたといえる。

PORcuとヘキサノールを用いた加熱・冷却により進行する超分子重合の模式図 (画像提供:理化学研究所)

冷却により超分子ポリマーが再形成されたのは、非極性溶媒中においてアルコールはアルコール同士で水素結合を形成し、逆ミセルと呼ばれる球状集合体を形成するように集まるためであることが考えられるという。そのため、温度を下げアルコール同士の集合体形成が促進されることで、PORcuと相互作用できるアルコールの濃度が低下し、超分子ポリマーの形成が促進されたのではないかと、同研究グループは考察している。