京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は5月19日、合成ペプチドを用いて未分化iPS細胞を効率的・選択的に除去する手法を開発したと発表した。

同成果は、京都大学CiRA未来生命科学開拓部門 Yi Kuang研究員、齊藤博英教授らの研究グループによるもので、5月18日付の米国科学誌「Cell Chemical Biology」に掲載された。

iPS細胞を特定の細胞に分化させて移植する際、未分化のままのiPS細胞が残っていると、移植後に腫瘍を形成する可能性があるため、iPS細胞を再生医療に用いるに当たっては、分化させた細胞集団に混在するiPS細胞をいかに取り除くかが課題となっている。

同研究グループは今回、iPS細胞の表面に多く発現しているALP(アルカリフォスファターゼ)と結合すると構造が変わり、細胞を破壊するペプチドD-3を合成。D-3を培地に添加することで、従来の手法よりも効率的にiPS細胞を除去できることを明らかにした。

また、iPS細胞と、iPS細胞から分化させた心筋細胞を混ぜて培養し、D-3で処理をしたものをマウスの精巣に移植するという実験から、D-3で処理しなかった場合に比べて、D-3で処理をした場合は移植後に腫瘍が形成される確率を低減できることも確認している。

同研究グループは、今回開発した技術を応用することで、iPS細胞を簡便・選択的・効率的に除去して、目的とする細胞の純化が容易になることが期待されるとしている。

D-3の作用によってiPS細胞が破壊されるしくみ。D-3はiPS細胞の表面に多く存在するALPに反応して細胞を破壊する (出所:京大CiRA Webサイト)