北海道大学は、種類の不明なキャビア1粒からでも、オオチョウザメの最高級キャビアであるか判別する方法の開発に成功したと発表した。

研究の概要

同研究は、北海道大学大学院水産科学研究院のMiloš Havelka(南ボヘミア大学チェスケーブジェヨヴィツェ校水産及び水圏保護学部にも所属)、藤本貴史、萩原聖士、足立伸次、荒井克俊らの研究グループによるもので、同研究成果は英国時間5月10日に「Scientific Reports」にオンライン公開された。

オオチョウザメはワシントン条約に登録されている絶滅危惧種であり、国際取引の際には厳しい規制の対象となっているが、そのキャビア(卵)は最高級食材として知られている。近年では、チョウザメ類の養殖が世界的に盛んになり、様々なチョウザメ類のキャビアが世界各国で生産されている。特に、オオチョウザメとコチョウザメの雑種である「ベステルチョウザメ」は養殖に適しており、キャビアの生産も可能な種となっている。しかし、原材料となった魚種をキャビアの外見から特定することはほぼ不可能で、これまでも一部のチョウザメでは原材料となった魚種を判別するための様々な方法が考案されてきたが、オオチョウザメや、それを親とするベステルチョウザメを識別する方法は無かったという。

同研究では、オオチョウザメ、コチョウザメ、ベステルチョウザメ、その他8種のチョウザメ類のDNAサンプルを用いて、オオチョウザメとコチョウザメ、その他8種のチョウザメを識別可能なDNA配列を探索した。同研究チームは、目的とするDNAの特定の領域を短時間で大幅に増幅する手法であるPCRによるDNA解析で、オオチョウザメ、コチョウザメ、その他8種のチョウザメ類のDNAを識別可能な部分を特定し、「オオチョウザメのDNAだけでPCR増幅するプライマー」、「オオチョウザメ以外のチョウザメ類のDNAでPCR増幅するプライマー」、「コチョウザメのDNAだけでPCR増幅するプライマー」、「コチョウザメ以外のチョウザメ類のDNAでPCR増幅するプライマー」の設計に成功した。プライマーとはPCRで増幅したい領域の両端に特異的に結合する1本鎖DNAで、特定の領域だけをPCRで増幅することができる。4種のプライマーを併用すると、オオチョウザメだけでなく、オオチョウザメを親にもつ雑種(ベステルチョウザメも含まれる)に由来するキャビアを識別することが可能となる。

同研究で開発された手法により、正確で迅速かつ安価な種判別を行うことで、より信頼性が高い検査を行うことが可能となり、公正な国際取引に貢献できる。これにより、チョウザメ類の資源管理や多様性保全に対 しても、大きな貢献が期待されるということだ。