昨年3月にトップ棋士を破って囲碁界に衝撃を与えた人工知能 (AI)「AlphaGo」が、現在世界最強のプロ棋士と呼ばれる中国の柯潔 (Ke Jie、カ・ケツ)九段と5月下旬に中国で対局する。

AlphaGoは、Google傘下の英DeepMindが開発するAIだ。AIは三目並べやチェッカーに始まり、近年ではチェスや将棋でプロ棋士を打ち負かしてきたが、広い盤面で指し手の組み合わせが多岐にわたる囲碁ではプロレベルの壁を打ち破れずにいた。ところが、2015年10月に欧州でAlphaGoがプロ棋士に完勝。そして昨年3月に李世ドル氏と韓国ソウルで対局し、世界トップクラスのプロ棋士には及ばないという対局前の予想を覆して4勝1敗で勝利した。その後、「Master」という名前で正体を隠してオンラインでプロ棋士相手に連勝を続けて話題になったものの、公式な場でのAlphaGoとプロ棋士の対局は行われていない。

AlphaGoは5月23日~27日に中国の烏鎮で開催される「Future of Go Summit」において、柯潔 九段に挑む。Masterがオンラインでトップ棋士を相手に連戦連勝したのはAIのスピードを活かせる早碁だったが、Future of Goでの対局は伝統的な3局勝負であり、プロ棋士の頂点に対してAlphaGoの能力が試される対局になる。柯潔 九段は10代で4つの世界タイトルを獲得しており、「史上最強」の呼び声も高い。

李世ドル氏との対局の後、人間がAIに敗れることで、囲碁というゲームの衰退を危惧する声が広がった。しかし、実際にはAlphaGoの台頭によって、プロ棋士の創造性や棋力が向上し、囲碁のコミュニティも広がったという。トッププロ棋士の1人に数えられる周睿羊氏は「AlphaGoとの対局は、不可能な動きなどないという自由を我々に感じさせた。そして今、誰もが以前は挑まなかったスタイルに挑戦している」とコメントしている。

人とAIが互いに影響し合うことで囲碁というゲームをより深く解き明かせる可能性を探るのがFuture of Go Summitのテーマであり、Googleおよび中国のAI研究の専門家が多数参加する。柯潔 九段とAlphaGoの1対1の対局のほか、サミットではAlphaGoとペアを組んだプロ棋士同士の対局「Pair Go」、AlphaGoがトッププロ棋士5人のチームと対局する「Team Go」なども行われる。