皮膚バリア形成に重要な脂質産生を解明-アトピー性皮膚炎治療薬開発に期待

北海道大学大学院薬学研究院の木原教授らの研究グループは、皮膚バリア形成に最も重要な脂質(アシルセラミド)の産生の分子機構の全容を解明したと発表した。

概念図

同研究は、日本医療研究開発機構(AMED)の革新的先端研究開発支援事業(AMED-CREST)「画期的医薬品等の創出をめざす脂質の生理活性と機能の解明」研究開発領域における研究開発課題の一環として行われ、3月1日に、雑誌「Nature Communications(DOI: 10.1038/NCOMMS14610)」にて公表された。

アシルセラミドは、皮膚にしか存在しない特殊な脂質で、外界の病原体や汚染物質の侵入を防ぐ皮膚バリアの機能に最も重要な脂質の一種。アトピー性皮膚炎患者ではアシルセラミド量が低下しており、また、アシルセラミドが合成できない遺伝子異常は、先天性魚鱗癬と呼ばれる重篤な皮膚疾患を引き起こすことが知られている。アシルセラミドは、3つの構成成分(長鎖塩基・オメガ水酸化超長鎖脂肪酸・リノール酸)からなっており、このうちの長鎖塩基とオメガ水酸化超長鎖脂肪酸が結合したオメガ水酸化超長鎖セラミドにリノール酸を付加するステップがアシルセラミド産生の最終ステップだが、その反応を触媒する酵素の遺伝子が未だ不明であった。同研究グループでは、アシルセラミド産生の分子機構の解明に取り組み、これまでに産生経路の中間体の解明、化学反応の順序の解明、数々のアシルセラミド関連酵素遺伝子の同定に成功してきたが、アシルセラミド産生の最終ステップに関わる酵素遺伝子の同定が不明なまま残されていたという。

同研究グループは、オメガ水酸化超長鎖セラミドを産生する培養細胞系を確立し、この細胞を用いてアシルセラミド産生活性の評価を行ってきた。脂質の検出は、質量分析または放射性同位体標識体の薄層クロマトグラフィーによる分離によって行い、また、PNPLA1タンパク質を無細胞タンパク質翻訳系によってリポソーム存在下で合成し、生化学的に酵素活性を測定した。野生型のPNPLA1タンパク質だけでなく、魚鱗癬患者に見られる変異型PNPLA1タンパク質の酵素活性も測定した。最終的に、遺伝子導入効率が良い一般的な培養細胞中に同定してきた遺伝子群を導入し用いることで、アシルセラミド産生の最終ステップを触媒する酵素遺伝子として、PNPLA1を同定に成功。PNPLA1タンパク質はオメガ水酸化セラミドに脂肪酸であるリノール酸を付加してアシルセラミドを作り出す反応を触媒するという。

同研究グループは、このリノール酸の供給源がトリグリセリド(グリセロールに3つの脂肪酸が付加した中性脂質)であること、PNPLA1タンパク質はトランスアシラーゼと呼ばれる酵素に分類されることも生化学的な手法によって明らかにした。また、PNPLA1は先天性魚鱗癬の原因遺伝子として知られていたが、今回の結果によって遺伝子変異と病態の関連も明らかになったということだ。

対症療法に頼っており、根治可能な原因療法が存在しないアトピー性皮膚炎や、治療薬は全く存在しない魚鱗癬の有効な治療薬の開発には、病気の原因となっている皮膚バリアの回復が不可欠となる。同研究により、アシルセラミド産生の分子機構の全容が解明されたことで、今後アシルセラミドの産生を増強する化合物の探索を行うことが可能となり、皮膚バリア増強という新たな方策による皮膚疾患治療薬の開発が期待されるということだ。



人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事