米ハワイ島にある「すばる望遠鏡」の高性能カメラが捉えた7千万に及ぶ膨大な銀河や星の画像データを国立天文台が2月28日公開した。広い宇宙の解明を目指す「宇宙の国勢調査」の第1弾で、同天文台は「(データを活用することにより)宇宙の起源とその進化の解明に一歩近づくことができる」としている。

画像1 HSC-SSPで観測された「ろくぶんぎ座」方向に千以上の銀河が浮かぶ様子の合成画像。距離は数十億光年。(米プリンストン大学/HSC Project提供)

画像2 HSC-SSPで観測された「りゅう座」方向にある銀河の合成画像。距離は4億光年で「おたまじゃくし銀河」として知られる。銀河同士のすれ違いによる重力相互作用で生じた星の尾が特徴的(国立天文台/HSC Project提供)

画像3 米ハワイ島マウナケア山頂付近に建てられた国立天文台のすばる望遠鏡(国立天文台提供)

「宇宙の国勢調査」は、すばる望遠鏡に搭載された「超広視野主焦点カメラ(HSC)」が2014年から5、6年かけて観測する「戦略枠観測プログラム」(HSC-SSP)の大規模データ。14年から2年近くの間に観測した「第1期データ」が2月28日に公開された。公開総データ量は80テラバイトで、一般的なデジタルカメラ画像1千万枚分に相当するという。

今回公開された第1期データ画像は7千万の銀河や星が「カタログになっている」(国立天文台)という。「ろくぶんぎ座」方向の数十億光年先の宇宙に千以上の銀河が浮かんでいる様子や、「りゅう座」方向の4億光年先にあるオタマジャクシの形をした銀河などが含まれている。

すばる望遠鏡は、国立天文台が米ハワイ島にあるマウナケア山頂付近に建設した大型光学赤外線望遠鏡で、光を集める主鏡の口径は8.2メートルで完成当時は世界最大(現在は米アリゾナ州の望遠鏡が最大)。1999年に初観測し、2012年に広い範囲を撮影できる8億7千万画素の高性能カメラ(HSC)を設置して観測能力を大幅に向上させた。宇宙誕生初期にできた銀河の観測などで世界的な実績を上げている。

HSC-SSPには国立天文台、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構のほか、米プリンストン大学や台湾の研究機関の研究者も参加している。HSC-SSPのチームは今後も観測を続けて第1期よりもさらに広い範囲の宇宙をカバーするデータの公開を目指す。

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