東北大学は2月24日、ウラン化合物強磁性体UCoGeの超伝導発現機構を解明したと発表した。

同成果は、東北大学金属材料研究所 青木大教授、フランス原子力庁 ジャンパスカル・ブリゾン研究員、同博士学生のベイルン・ウ氏らの研究グループによるもので、2月23日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

磁性と超伝導はこれまでお互いに相反する現象だと考えられてきた。とくに磁気モーメントの向きがそろった強磁性状態は、超伝導に必要な2つの電子の対(超伝導電子対)を破壊してしまうため、超伝導と強磁性は共存できない。しかし、ウラン化合物強磁性体UCoGeは例外的な物質で、超伝導と強磁性が共存することが知られている。同物質において、なぜ両者が共存するのか、なぜ磁場に対して特異な応答を示すのかということについては、これまで明らかになっていなかった。

同研究グループは今回、UCoGeの超高純度の単結晶を育成し、その輸送現象(電気抵抗、熱伝導度)と磁化を、極低温・強磁場という極限環境下で精密に測定した。この結果、強磁性の磁気モーメントと平行に磁場を加えたときは超伝導電子対が弱められ、垂直に磁場を加えたときは逆に強められることがわかった。

このため、垂直に磁場を加えると、磁場に対して極端に強い超伝導が実現する。通常、磁場を加えると超伝導は消えてしまうため、UCoGeは磁場によって超伝導が安定化するという、通常とはまったく異なる振る舞いを示すといえる。同研究グループは、この超伝導電子対の起源について、UCoGeが持つ強磁性ゆらぎであり、磁性と非常に相性の良い超伝導であることも明らかにしている。

今回の成果について同研究グループは、新奇な非従来型超伝導の発見や新たな超伝導材料の開発につながるものと説明している。

磁場によって安定化する強磁性超伝導体UCoGeの相図。磁場を加えると超伝導電子対が強められる(出所:東北大Webサイト)