京都大学(京大)は2月20日、原子間力顕微鏡(AFM)をもとにした新しい分析手法「走査型熱振動顕微鏡法(Scanning Thermal Noise Microscopy:STNM)」を開発したと発表した。

同成果は、京都大学工学研究科 小林圭准教授、山田啓文教授、豊田工業大学 八尾惇研究員らの研究グループによるもので、2月17日付けの英国科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

AFMは、原子レベルで尖った探針をもつマイクロスケールの板ばね「カンチレバー」を用いて、探針と試料表面との間にはたらく原子・分子間力を検出し、試料表面の微細形状やナノ物性を計測する手法。カンチレバーは、調和振動系として特定の周波数(共振周波数)の外力によって共鳴的に振動し、その周波数応答は共振スペクトルを示す。また周囲の熱揺らぎによって、原理的に常に振動している(熱雑音振動=熱振動)。

探針が試料に接触した状態では、カンチレバーの共振周波数は、接触部の試料表面の弾性率に応じて変化するが、同研究グループは今回、カンチレバーの熱振動の振幅の周波数依存性、つまり熱振動スペクトルからも弾性率を求めることができることを発見。探針直下の領域の弾性率を計測することができるSTNMを新たに開発した。同手法により、膜厚300nmの高分子膜で覆われた直径40nmの金ナノ粒子を検出することに成功している。

同研究グループは今回の成果について、非破壊、ナノスケール分解能での表面下構造イメージング確立に向けての大きな前進であり、今後さまざまな産業、バイオ、医療分野における非破壊ナノ内部診断法実現につながるものと説明している。

走査型熱振動顕微鏡(STNM)による高分子膜の内部に隠れた金ナノ粒子の可視化の模式図(出所:京都大学Webサイト)