東京大学(東大)は2月3日、金属表面上に形成した水単分子層における個々の水分子を、原子間力顕微鏡を用いて可視化することに成功したと発表した。

同成果は、東京大学大学院新領域創成科学研究科物質系専攻 塩足亮隼助教、杉本宜昭准教授らの研究グループによるもので、2月3日付けの英国科学誌「Nature Communications」に掲載された。

金属表面上に吸着した水分子は、分子同士が水素結合することで多彩なネットワーク構造を作ることが知られており、金属の種類や温度によって、水のネットワークは1次元、2次元、あるいは3次元に成長し、その物性も大きく変化する。金属表面に直接結合した水分子のネットワークである水単分子層の構造を知ることは特に重要であり、これまで走査トンネル顕微鏡(STM)によって水単分子層のナノスケールでの観察が行われてきた。

ただし、STM像は分子の電子状態を反映したものであり、原子の大きさよりも広がった電子雲を画像化することになるため、多くの場合、薄膜内部の個々の水分子を可視化することができないという課題があった。分子の位置や配向を正確に知るためは、別の実験手法や理論計算によるサポートが必要となる。

そこで今回、同研究グループは、STMとはイメージングのメカニズムが異なる原子間力顕微鏡(AFM)を利用。観察対象として、銅表面上に成長した「水のチェーン」を選択した。同チェーンは、5個の水分子が水素結合によって5角形(5員環)を形成し、それが構成単位となって1次元的に配列しており、構造モデルは分光実験や理論計算によって提唱されていたが、従来の手法であるSTM像だけではチェーン内部の水分子がどのように並んでいるかを知ることはできなかった。

同チェーンをAFMによって観察した結果、1つひとつの水分子が鮮明に可視化され、5員環によって構成されていることを実証することができたという。さらに、AFMを用いることによって、今までわからなかったチェーンの末端の構造が明らかになった。

同研究グループは、チェーン末端のように極めて局所的な水分子の配列を明らかにすることは、他の実験手法による測定や理論による予測計算では極めて難しく、AFM観察が水分子ネットワークの局所構造を調べるための最も有力な手法になると説明している。

(a)銅表面に成長した水のチェーンの構造モデル。茶色、赤色、白色の球は、それぞれ銅、酸素、水素原子。青い太線で囲んだ五角形の領域は5員環を表す (b)水のチェーンのSTM像 (c)bと同じチェーンのAFM像。水のチェーンの5員環構造がAFM像によって可視化された (出所:東京大学 Webサイト)

いろいろな種類の水のチェーン末端のSTM像(上段)とAFM像(下段) (出所:東京大学 Webサイト)