日本獣医生命大学(NVLU)は、雄イモリが雌に対してプロポーズをする前に、雌のほうが雄をその気にさせるフェロモンによる信号を出していることを発見したと発表した。
同成果は、同大 獣医学科 病態獣医学部門の中田友明 講師、奈良県立医科大学の豊田ふみよ 准教授、富山大学の松田恒平 教授、帝京大学の中倉敬 助教、東邦大学の蓮沼至 講師、早稲田大学の菊山榮 名誉教授らによるもの。詳細は、英国オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
これまでの研究から、雄のアカハライモリが求愛行動中に雌を惹き付けておくためのフェロモン(ソデフリン)が発見されていたことを受け、今回、研究グループは、雌自身も雄の求愛に応じる用意があることを示すフェロモンを出しているに違いないと考え、調査を実施。その結果、雄イモリが雌に対してプロポーズをする前に、雌のほうが雄をその気にさせるフェロモンによる信号を出していることを発見し、そのフェロモンを「アイモリン(imorin)」と命名した。
また、アイモリンの化学構造を調べたところ、アミノ酸3残基(アラニン、グルタミン酸、フェニルアラニン)から構成されるペプチドで、生殖期にのみ、卵管の繊毛細胞でつくられ、水中に随時放出され、生殖期の雄でのみ、信号が受け取れることを発見したという。
この結果、アイモリン信号が雄の脳に伝えられると、雄が雌をつなぎ止めておくフェロモン(ソデフリン)を放出し、最終的には求愛行動を完結させることが、イモリの生殖を効率よく成功に導く仕組みが出来上がるという考えに至ったという。
なお、研究グループでは、性フェロモン分子がペプチドであることは種の分化に重要な意味をもつ可能性があるとしているほか、生殖活動に重要な役割をもち、繁殖相手の性行動に影響を与える性フェロモンが雌雄両方に備わっていることがわかったことで、今後それぞれのフェロモンがそれを受け取った側の動物に性行動を引き起こすまでの過程を脳内で調べることが可能になるともしており、今後、性フェロモンの作用機序や性行動が起きるまでの脳内での過程を深く理解することで、単にイモリの生殖メカニズムの解明だけでなく、水産・畜産動物、希少動物などの生殖や性行動に関する問題の解決にもつなげられることが期待されるとコメントしている。