国立天文台、ミシガン大学、京都産業大学、立教大学および東京大学の研究者からなる研究グループは、超小型深宇宙探査機「プロキオン(PROCYON)」に搭載された「ライカ(LAICA)望遠鏡」を用いて、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(正式名称:67P/Churyumov-Gerasimenko)の水素ガスを観測し、彗星核からの水分子放出率の絶対量を決定することに成功したと発表した。同成果の詳細は、1月24日付の米国の天文学専門誌「The Astronomical Journal」に掲載された

プロキオンは東京大学が開発し、2014年12月に小惑星探査機「はやぶさ2」の相乗り衛星として打ち上げられた重さ約65kgの小型探査機。地球の周りを広く覆っている水素ガスの層「ジオコロナ」の外側から彗星コマ全体の水素ガスの観測を実施し、彗星活動が最も激しい近日点付近での水分子の生成率の絶対量を決定することに成功。この結果、彗星のコマ・核モデルが検証され、ロゼッタ探査機で決定された成分比などを元に2015年回帰全体における彗星の活動度を正確に推定できたと研究グループでは説明する。

なお、今回の成果について研究グループでは、大型計画で実施できない重要な部分を低コストかつ短期間で開発された計画によってサポートするという理想的なサイエンスの形であり、今後の小型探査機での大型計画のサポート観測におけるモデルケースになることが期待されるとコメントしている。

彗星コマ中での水素原子の生成過程の模式図 (出所:国立天文台 Webサイト)