南極にある日本の観測基地「昭和基地」の沿岸で新種のゴカイ類を発見したと、北海道大学と国立極地研究所がこのほど発表した。ゴカイ類は「環形動物門」に分類される動物で、魚釣りの餌に用いられることで知られる。いくつかの科や属がある。極寒の環境に生息する生物の生態系実態の解明などに貢献できる研究成果という。

写真 左はフジキブクレハボウキ、右はキブクレハボウキ (提供・北海道大学と国立極地研究所)

北海道大学大学院理学院と国立極地研究所の研究チームは、過去に昭和基地沿岸で実施したスクーバ潜水調査で水深8,9メートルから採集され、同研究所に保管されていた海産動物標本をあらためて詳しく調べた。光学顕微鏡などを使った詳細な形態観察の結果、標本の一つは 「ハボウキゴカイ科」に含まれる新種であることが判明。この新種の全長は10センチ近くあり、分厚い寒天質をまとった姿を極寒環境で着ぶくれしている様子に見立てて「フジキブクレハボウキ」と命名して新種記載した。もう一つの標本は記載済みだったが「キブクレハボウキ」と和名を付けて再記載した。

南極などの極寒環境にも適応できる生態系については、生物多様性研究への関心が高まっている中でも未解明なことが多かった。研究チームによると、南極沿岸部はほとんどが厚い氷に覆われて大規模機器調査が難しいことなどから、これまで南極域の海産動物に関する知見は少なかった。今回の成果により生物の極限環境適応研究の進展が期待できるという。

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