北海道大学(北大)は1月4日、携帯端末をそばに置いておくことが注意に及ぼす影響を検証し、不使用でも端末がそばにあるときは、本来向けるべき場所への注意が阻害されることが明らかになったと発表した。
同成果は、北海道大学大学院文学研究科 河原純一郎特任准教授、中京大学 伊藤資浩氏らの研究グループによるもので、12月26日付けの日本心理学会誌「Japanese Psychological Research」に掲載された。
歩きスマホなど、携帯端末の操作に夢中になっていることで、ほかの物事へ注意が行き届かず、事故を起こしてしまうという問題が昨今話題となっている。しかしながら日常生活においては、メールの返事が来ないか、SNSの通知が来ないかなど、使用しないときにも携帯端末に注意を向けることがある。
同研究グループは、今回、単に携帯端末が置いてあることで注意が損なわれるかどうかについて検証を行った。具体的には、実験参加者をスマホ条件と統制条件の2グループにランダムに割り振り、スマホ条件では、PCモニタの脇に実験者のスマホを置き、実験参加者にモニタ上の多数の文字のなかから標的文字を探すよう求め、探索にかかった時間を計測。統制条件では、スマホの代わりに同サイズのメモ帳を置き、同様の実験を行った。
この結果、標的を探すまでに要した時間は、統制条件よりスマホ条件で長くかかったという。これは、単にスマホが置いてあるだけで自動的に注意が向いてしまい、課題成績が悪くなったと考えられる。しかし、同効果は普段のスマホ使用頻度が低い人に強く起こり、スマホを普段からよく使用する人はかえってスマホの置かれた側の標的に気づきやすいこともわかった。
同研究グループは、今回の結果について、携帯電話が置いてあるだけでも注意を自動的に引きつけること、およびそのような注意の引きつけとそれを無視しようとする働きに個人差があることという2つの要因が合わさって、携帯端末が置いてあるだけで注意の広がりに偏りが生じ、身のまわりに注意を向ける行動が阻害されることが考えられると説明している。