米国航空宇宙局(NASA)の月探査機「ルナー・リコネサンス・オービター」(LRO)の運用チームは12月7日、アポロ計画の着陸船や無人探査機が、月面に着陸・衝突した場所の正確な座標を特定したと発表した。論文は「Icarus」誌の2017年2月号に掲載される。

研究を行ったのはアリゾナ州立大学を中心とする、LROに搭載されているカメラ「LROC」の運用チームで、2009年から2015年までの間に集められた画像と、ほかの観測機器などの情報を統合し、±15mの範囲で緯度と経度を特定することに成功したという。

今回特定されたのは、アポロ計画の「アポロ11」から「アポロ17」までの着陸地点(月降下段が残されている)や、月面に残された観測装置や探査車をはじめ、アポロ以前に打ち上げられた月探査機「サーヴェイヤー」、ソヴィエト連邦が打ち上げた「ルナー17」などの探査機や無人探査車、中国の月探査機「嫦娥三号」、さらにアポロを打ち上げたロケットや、運用を終えた月周回衛星などの衝突地点など。

研究チームは、こうした"遺物"が、将来の無人・有人月探査が月で活動する際の水準点として活用できるとしており、そのためにそれぞれの正確な座標を知ることは重要だと語っている。

LROが撮影したソ連の月探査機「ルナー17」の着陸地点。中央に見えるのが着陸機で、その周囲に無人探査車「ルノホート」が走行した跡が見える (C) NASA/GSFC/Arizona State University

LROが撮影した月探査機やアポロ宇宙船を打ち上げたロケットの衝突地点 (C) NASA/GSFC/Arizona State University

ルナー・リコネサンス・オービターは2009年6月18日に打ち上げられたNASAの月探査機で、「リコネサンス」(偵察)という名のとおり、最高で50cmという、きわめて高い解像度で月面を撮影することができる性能をもっている。これまでの観測で、月面のほぼすべての領域を撮影し、そのデータから立体地図を作成したり、アポロ計画のや無人探査機の着陸地点を撮影したりなど、多くの成果をあげている。

LROはミッションの延長を重ねつつ、打ち上げから7年以上経つ現在も運用が続いており、地形図などは今なお新しいデータによって更新が続いている。また放射線や月面の温度などを計測する機器も含めたLROの膨大な観測データは、今も分析が続いている。

また、LROの打ち上げに相乗りする形で、「エルクロス」という探査機も月へ向けて打ち上げられている。まず、LROとエルクロスを月まで打ち上げたロケットの第2段機体を月の南極にある「カベウル・クレーター」に衝突させ、それにより舞い上がった塵の中にエルクロスを突入させるというダイナミックな観測が行われた。その結果、同地に水が存在することを示すデータが得られている。

エルクロスは観測を行った後、ロケットの後を追うように自身も月面に衝突し、運用を終えている。

ルナー・リコネサンス・オービター (C) NASA

LROと共に打ち上げられたエルクロス。手前にある六角柱の形をした物体がエルクロスの本体で、その前方にある円柱形の物体が、LROとエルクロスを打ち上げたロケット機体 (C) NASA

【参考】

・Exciting New Images | Lunar Reconnaissance Orbiter Camera
 http://lroc.sese.asu.edu/posts/938
・Coordinates of anthropogenic features on the Moon
 http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0019103516301518
・Coordinates of Lunar Anthropogenic Targets - LROC Science Operations Team - Arizona State University
 http://lroc.sese.asu.edu/files/DOCS/2016_LROC_Coordinates_of_Human_Features.pdf
・Lunar Reconnaissance Orbiter
 https://lunar.gsfc.nasa.gov/science.html
・About | Lunar Reconnaissance Orbiter Camera
 http://lroc.sese.asu.edu/about