順天堂大学は12月1日、潰瘍性大腸炎に対する抗生剤併用便移植療法の有効性を確認したと発表した。

同成果は、順天堂大学大学院医学研究科・消化器内科学講座 石川大准教授らの研究グループによるもので、11月22日付けの米国科学誌「Inflammatory Bowel Disease」電子版に掲載された。

便移植療法は副作用の少ない治療として注目され、クロストリジウム・ディフィシル感染性腸炎への適用では高い奏功率を示したことがこれまでに報告されている。しかし、潰瘍性大腸炎に対する便移植療法のランダム化比較試験では、治療効果が十分でないまたは効果がないとの報告もあり、従来の方法では治療効果は不十分であったという。

そこで同研究グループは、潰瘍性大腸炎に対するより効果的な腸内細菌叢の再構築と便移植療法の効果増強を狙って、便移植前に前処置として抗生剤3種類(AFM:アモキシシリン、ホスミシン、メトロニダゾール)を投与する「抗生剤併用便移植療法」を提唱しており、2014年7月~2016年3月にかけて臨床研究を実施した。

同臨床研究では、41例の潰瘍性大腸炎の患者を対象に、抗生剤併用便移植療法(21例)、抗生剤単独(20例)の治療を実施し、治療経過中の腸内細菌叢の変化について次世代シーケンサーを用いて解析が行われた。

この結果、抗生剤併用便移植した21人の患者中17人が治療を完遂し、14人(有効率82.4%)に有効性が認められた。一方、抗生剤単独群では20人中19人が治療を完遂し、有効性が認められたのが13人(68.3%)であり、治療後4週間の経過においては、抗生剤併用便移植の治療効果が高いことが明らかになった。

また、腸内細菌叢の分析では、抗生剤療法後には腸内細菌のバクテロイデス門の割合が著明に減少するが、便移植療法後4週間で効果があった症例では、バクテロイデス門の割合が有意に回復し、効果が出なかった症例ではバクテロイデス門の回復は認められなかった。

さらに、バクテロイデス門の回復は、潰瘍性大腸炎の病勢を表す内視鏡スコアと相関が認められた一方で、抗生剤単独群では、治療後4週間経過してもバクテロイデス門の割合の回復は十分でなく、回復した症例と治療効果の関連性は認められなかった。これは、ドナー便中のバクテロイデス門が治療効果と病勢に関わっていることを示しており、抗生剤を併用することで、便移植による腸内細菌の移植がより効率的に達成できるようになることが考えられる。

同研究グループは今回の成果について、便移植療法などの腸内細菌療法が、潰瘍性大腸炎の有効な治療法になりうる可能性を示したものであると説明している。

抗生剤併用便移植療法の概念図