東北大学は11月16日、恐竜絶滅を引き起こした白亜紀末の天体衝突クレーターをメキシコ沖にて掘削し、物理探査と数値計算により同クレーターの形成過程を詳細に明らかにしたと発表した。
同成果は、東北大学 後藤和久准教授、海洋研究開発機構 佐藤峰南JSPS特別研究員、富岡尚敬主任技術研究員、東邦大学 山口耕生准教授らを含む国際研究グループによるもので、11月18日付けの米国科学誌「Science」に掲載された。
メキシコ・ユカタン半島北部に位置するチチュルブ・クレーターは、約6600万年前の白亜紀末の天体衝突により形成された。この天体衝突が、恐竜を含む生物の大量絶滅を引き起こしたと考えられているが、同クレーターは直径約200kmと巨大であり、さらに白亜紀末ごろの地層は地下数百mに埋没しているため、その構造や形成過程についてはほとんど明らかになっていなかった。
今回、世界25カ国が参加する国際深海科学掘削計画の第364次研究航海「チチュルブ・クレーター掘削計画」において、ピークリングと呼ばれる巨大衝突クレーター特有の構造に狙いを定めて、特定任務掘削船を用いて掘削が行われた。
この結果、地下約618mの深度から衝突起源の堆積物であると考えられる砂岩~角礫岩層を、748mの深度からは基盤岩となる花崗岩層を発見。同結果と数値計算を組み合わせることにより、チチュルブ・クレーターのピークリングの形成過程の解明に成功した。
今回の発見により、衝突の規模や放出エネルギー等を詳細に計算できるようになるため、同研究グループは、今後、衝突に伴う環境変動の影響を高い精度で推定することで、恐竜をはじめとする生物の大量絶滅を引き起こすメカニズムの解明につながることが期待されると説明している。