JR西日本は1日、三江線江津~三次間の鉄道事業廃止について発表した。社内手続きを経た上で、9月末日までに鉄道事業の廃止届出を行う。
三江線は山陰本線江津駅(島根県)と芸備線三次駅(広島県)を結ぶ営業キロ108.1kmの路線で、全線開通は1975(昭和50)年8月。現在はキハ120形気動車による普通列車が運行され、本数は上下各4~5本程度となっている。JR西日本によれば「民営化後も道路整備やマイカーシフト等の影響によりご利用減が人口減を上回る状況」で、三江線の維持・存続のため、経営努力(駅体制の見直し、ワンマン運転化など)や増収策(団体列車の設定など)もこれまでに行ってきたという。
近年は三江線活性化協議会において、2011年度から5カ年計画の下、地域と一体となった利用促進の取組みも進めてきた。それでも利用者の減少に歯止めがかからず、2014年度の輸送密度は1日あたり50人で、JR発足時の約1/9まで落ち込んでいる。加えて2006年・2013年の2度にわたり、大規模災害による長期間運休を余儀なくされる事態に。激甚化する災害リスクの高まりも看過できない状況となっていた。
JR西日本は昨年10月、三江線の沿線市町へ「持続可能な公共交通の実現に向けた検討」を申し入れ、今年2月に設置された検討会議にて地元と議論を重ねてきた。その後、6月に作成された検討会議の議論に関する報告書を踏まえ、「『拠点間を大量に輸送する』という鉄道の特性を発揮できない」「通院、買物等の市町内で完結する少量且つ多様な移動が、この地域の移動実態であり、鉄道が地域のニーズに合致していない」「自然災害リスクの高まりは当線区においても無関係ではなく、バスにて代替可能な鉄道に対し、被災と復旧の繰り返しは社会経済的に合理的でない」などを理由に、「三江線の鉄道事業はどのような形態であっても行わない」との判断に至ったという。
鉄道廃止後の代替交通については、「当社もこの地域で公共交通を担ってきた事業者の立場として、地元と一緒により良い地域交通策定に向けて関わらせて頂きたい」とJR西日本。新たな交通プランの策定に協力するとともに、初期投資費用の全額と一定期間の運営費用を負担する考えで、今後は地元と具体的な協議を進めていくとしている。