欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会(EC)は8月30日、米アップルがアイルランドに設立した会社に対して同国が法人税を優遇していたのがEU保護政策規則(EU State Aid Rules)に違反するとして、最大130億ユーロの追徴課税を行うように命じた。
ECの調査結果によると、アイルランドがAppleに提供した税優遇措置によって、同社がアイルランドに設立した子会社にかかる実質法人税が2003年は欧州での利益の1%に、そして2014年には0.005%にとどまった。これらが特定の企業への税優遇を制限するEU保護政策規則に抵触するとして、2003年から2014年までの間に税優遇措置によって収められなかった最大130億ユーロを違法な補助として延滞利子を含めてアイルランドが徴収するように命じた。
AppleはアイルランドにApple Sales Internationalという子会社を設立、世界中の機器製造業者から(Apple)製品を買い取り、それらを欧州、中東、アフリカ、インドで販売して収益をアイルランドに集中させていたという。なお、アイルランドにおけるAppleへの税優遇は2015年に終了している。
ECの判断を受けて、Appleは30日に「A Message to the Apple Community in Europe」というTim Cook,CEOのメッセージを公開した。同社はアイルランドや事業を展開する全ての国において、それぞれの法律に従った税金を納めていると指摘、その上でECの判断は欧州への投資、雇用を創出する取り組みに悪影響を与えると厳しく批判した。また、グローバル企業への課税に関して世界共通の原則が整っていないのが議論をこじらせている原因であるとして、そうした問題解決のためにAppleはシンプルで透明な国際的税改革の実現を積極的にサポートしていると述べている。アイルランド政府とAppleは、ECの判断に対して異議を申し立てるという。
EUは近年、グローバル企業が欧州において税率の低い国に事業や収益を移して課税を軽減する問題の監視を強化しており、2015年にStarbucksに対するオランダの税優遇が違法であるとして追徴課税を指示、またAmazon.comやMcDonald’sへの税優遇についても調査している。米国企業が数多く対象になっていることから、米国の政府や経済界から反発の声が上がっている。