矢野経済研究所は8月22日、ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージベンダーを対象に行った、国内のERPパッケージライセンス市場の調査結果を発表した。調査は2016年4月から7月にかけて、同社専門研究員による直接面談によって行われた。

ERPパッケージとは、財務会計、人事給与、販売管理、生産管理などの基幹業務データを統合する情報システムを構築するための基幹業務管理パッケージソフトウェア。今回の調査では、ERPパッケージライセンス市場として、基幹業務の一部機能のみを持ち、ERPパッケージのモジュール(構成要素)となるパッケージソフトウェアも対象としている。

ERPパッケージライセンス市場の市場規模推移と予測 資料:矢野経済研究所

2015年の国内ERPパッケージライセンス市場は1111億円(エンドユーザ渡し価格ベース)、前年比8.0%増となったという。2014年の伸び率を上回り、堅調な成長を維持した。その要因として、2015年はユーザー企業の業績が好調だったこと、一部のERPベンダーが2015年10月に施行されたマイナンバー制度をきっかけとした人事分野での需要獲得に成功したことなどが、挙げられている。

2016年は、ERPへの投資拡大につながると期待されていた消費税増税と軽減税率の導入の先送りが決まり、法改正などによる影響は少ないという。一方で、経営に貢献する基盤の構築というERP本来の目的で基幹システムを見直すニーズがERPパッケージライセンス市場を支えると同社は見ている。会計や人事分野でのグループ導入や、販売管理や生産管理分野での個別開発からERPパッケージへのリプレースは継続しており、2016年のERPパッケージライセンス市場(エンドユーザ渡し価格ベース)は、前年比8.1%増の1200億7000万円を予測している。

2016年以降は、イギリスの欧州連合(EU)離脱問題や円高、中国をはじめとする新興国の景気悪化、国内個人消費の不振など経済全般的に不安定な色合いが強まっており、ERP市場の成長を鈍化させる懸念があると指摘されている。しかし、不安定な外部環境に的確に対応できる経営のプラットフォームを構築したいという戦略的な理由でERPを再構築するユーザー企業も増えており、それに伴い、導入スピードが短く柔軟性の高いクラウドサービスの利用も拡大しており、クラウド化はERPのトレンドの1つとなっているとしている。