京都大学(京大)は7月27日、野生のボノボは年下のメスがオスから攻撃を受けたときに、年上のメスたちがそのメスを助けるという形で連合を形成していることを発見したと発表した。
同成果は、京都大学霊長類研究所 徳山奈帆子研究員らの研究グループによるもので、7月19日付の国際科学誌「Animal Behavior」に掲載された。
2頭以上の個体が共同で同じ個体を攻撃することを連合攻撃という。霊長類のメスの連合は多くの場合、血縁のあるメス同士で、メス間の順位や食物を巡る競争のために形成される。しかし、ボノボにおいては、集団内のメス同士に血縁関係がないのにもかかわらず、メスの頻繁な連合攻撃行動がみられる。
すべてのオスがメスよりも優位であるチンパンジーの社会とは異なり、ボノボはメス優位な社会を持っており、メス同士は頻繁に親和的交渉を行う。ボノボにおけるメスの連合は、メスの優位性を維持するために重要であると考えられてきたが、実際にメスがどのように連合を形成するのかは明らかになっていなかった。
今回、同研究グループは、コンゴ民主共和国ルオー学術保護区に生息する野生ボノボの一群を対象に観察を行った。この結果、メスの連合攻撃はすべて、オスを攻撃対象としており、特にオスがメスに対して攻撃的に振る舞った直後に多く行われていることがわかった。また、連合を組む際の攻撃の支援関係は互恵的ではなく、年上のメスが年下のメスを支援するという一方向的な関係がみられた。
オスとの1対1での攻撃交渉において、メスの勝率は老年メスが84%、中年メスが64%、若年メスが24%であったのに対し、連合を組むとメスは100%オスに勝つことができていたという。
同研究グループは、若いメスはオスよりも地位が低いが、年上のメスの支援によりオスからの攻撃を恐れずに集団に参加することができる一方で、年上のメスは年下のメスへのオスの攻撃的行動に対し、協力して繰り返し報復を行うことでオスの攻撃性をコントロールし、全体としてのメスの優位性を維持することで利益を得ていると考察している。
また、年上のメスは、支援を期待する年下のメスを自分の周りに集めることで、自らの息子により多くの交尾機会を与えることができると考えられるという。