ロシアの国営宇宙企業ロスコスモスは7月7日(日本時間)、大西卓哉(おおにし・たくや)宇宙飛行士ら3人の宇宙飛行士を乗せた「ソユーズMS-01」宇宙船の打ち上げに成功した。

ソユーズMS-01は新型宇宙船「ソユーズMS」の1号機で、大西宇宙飛行士らはこのあと2日かけて宇宙船の新しい装置などの試験を行いつつ、目的地である国際宇宙ステーション(ISS)へ向かい、約4カ月の宇宙滞在に挑む。

ソユーズMS-01を搭載した「ソユーズFG」ロケットは、日本時間7月7日10時36分(カザフスタン現地時間7月7日7時36分)、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地の第1発射台、通称「ガガーリン発射台」から離昇した。ロケットは順調に飛行し、打ち上げから約9分後にソユーズMS-01を分離した。

宇宙船には、コマンダーを務めるアナトーリ・イヴァニシン宇宙飛行士(ロスコスモス)、フライト・エンジニアを務めるキャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士(NASA)、そして同じくフライト・エンジニアを務める大西卓哉宇宙飛行士(JAXA)の、3人が搭乗している。

ロスコスモスや米国航空宇宙局(NASA)などによると、ソユーズMS-01は計画通りの軌道に乗っており、太陽電波パドルやアンテナの展開にも成功し、現在順調に飛行を続けているという。

イヴァニシン、ルビンズ、大西宇宙飛行士の3人はこのあと、地上の管制センターと連携し、ソユーズMSに搭載された新しい装置などの試験を実施する。

ソユーズMS-01は今後、徐々にISSに接近し、7月9日13時12分ごろに、ISSのラスヴェート・モジュールにドッキングする見込みとなっている。

大西宇宙飛行士ら3人は、第48次/第49次長期滞在員として、約4カ月にわたってISSに滞在し、各種実験や活動を実施。行きと同じソユーズMS-01に乗って、今年11月ごろに地球へ帰還する予定となっている。

大西卓哉さんら3人の宇宙飛行士を乗せた「ソユーズMS-01」宇宙船打ち上げの様子 (C) NASA

ソユーズMS-01に搭乗する宇宙飛行士

大西卓哉宇宙飛行士は1975年生まれで、現在40歳。今回が初の宇宙飛行となる。

大西宇宙飛行士は映画『アポロ13』を見たことがきっかけで宇宙を目指しはじめたという。前職は全日本空輸(ANA)でコ・パイロット(副操縦士)を務めていたが、2008年にJAXAが実施した宇宙飛行士の募集に応募。高い倍率をくぐり抜け、2009年2月にISSに搭乗する日本人宇宙飛行士の候補者として、油井亀美也宇宙飛行士とともに選抜された(その後、金井宇宙飛行士も選定)。

その後、厳しい訓練を経て、2011年7月にISS搭乗宇宙飛行士として認定される。同年10月からは米国フロリダ州沖にある米国海洋大気庁(NOAA)の海底研究施設「アクエリアス」において、第15回NASA極限環境ミッション運用(NEEMO15)訓練に参加。また2013年に打ち上げられた日本の宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機では、軌道上の宇宙飛行士に指示を与える役割(CAPCOM)を担当するなど、宇宙飛行士に必要な技能を磨き続けた。

そして2013年11月に、ISSの第48次/第49次長期滞在員のフライト・エンジニアとして任命され、その後も訓練を重ね、今回の打ち上げを迎えた。

大西宇宙飛行士が乗るソユーズMS-01のコマンダー(船長)を務めるアナトーリ・イヴァニシン宇宙飛行士は、1969年にソ連のイルクーツクで生まれた。元ロシア空軍中佐で、2005年にロシアのテスト宇宙飛行士として認定される。2011年に古川宇宙飛行士とともに第26/27次長期滞在員のバックアップ・クルーを務め、そして2011年から2012年にかけて、第29/30次長期滞在員としてISSに滞在した。今回が2回目の飛行となる。

キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士は、1978年米国コネチカット州出身。2005年スタンフォード大学でがん生物学で博士号を取得。2009年に宇宙飛行士候補者に選抜され、大西宇宙飛行士とはNASA Astronaut Group 20の同期である。大西宇宙飛行士と同じく今回が初の宇宙飛行となり、ともにソユーズのフライト・エンジニアを務める。

ソユーズMS-01に搭乗する3人の宇宙飛行士。左から、キャスリーン・ルビンズ宇宙飛行士(NASA)、アナトーリ・イヴァニシン宇宙飛行士(ロシア)、大西卓哉宇宙飛行士 (C) Roskosmos

ソユーズMS宇宙船の初飛行

ソユーズMSは、1967年以来約半世紀にわたって運用されているソヴィエト・ロシアの宇宙船「ソユーズ」の最新型機で、今回のソユーズMS-01が初飛行となる。従来機と比べ、より安全で効率の良い運用ができるよう、各種装置やシステムの近代化が図られている。また、これまでウクライナなどから輸入していた部品の使用を止め、ロシア製の部品を積極的に採用し、国産化も図られている。

同様の改良は、すでに無人の補給船「プログレスMS」に導入されており、これまで2機が飛行し、飛行実証を行っている。また今後のソユーズ宇宙船は、すべてこのソユーズMSに一本化される。

ソユーズMSは2020年代の中ごろまで運用される見通しで、その後は現在開発中のまったく新しい宇宙船「フィディラーツィヤ」が、宇宙飛行士の輸送を担う計画となっている。

打ち上げ準備中のソユーズMS-01 (C) RKK Energiya

打ち上げ準備中のソユーズMS-01 (C) RKK Energiya

(ソユーズMSの詳細は「"連邦のMS"の性能とは? - 大西飛行士が乗る「ソユーズMS」宇宙船のすべて」をご覧ください)

【参考】

・Space Station
 http://blogs.nasa.gov/spacestation/
・ソユーズ宇宙船(47S/MS-01)の飛行概要 [PDF: 2.1MB]
 http://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/onishi/material/onishi_press_soyuz.pdf
・大西卓哉宇宙飛行士長期滞在プレスキット(2016年7月1日 A改訂版) [PDF: 12.8MB]
 http://iss.jaxa.jp/iss/jaxa_exp/onishi/material/onishi_press-kit_0a_0701.pdf
・国際宇宙ステーション(ISS)のクルー: 国際宇宙ステーション(ISS) - 宇宙ステーション・きぼう広報・情報センター - JAXA
 http://iss.jaxa.jp/iss/crew/doc05.html#48