ジョンソン・エンド・ジョンソン ビジョンケア カンパニーは5日より、コンタクトレンズ装用による乾燥などの不快感を防ぐ"ハイパフォーマンス・コンタクトレンズ"「ワンデー アキュビュー オアシス」(価格:オープン/市場想定価格:3,800円前後)について、一部店舗における先行販売を開始した。
本稿では、6日に行われた記者発表会の様子をお届けする。
「コンタクトをやめる人」は年間60万人
視力矯正のためにコンタクトレンズを使う人は多いが、同社代表取締役プレジデント デイビット・R・スミス氏によれば、同社がコンタクトレンズを展開している中で、日本市場は世界第2位。今回新製品が発表されたワンデータイプに限定すれば世界最大の市場だという。
新製品の紹介の前に、現在の日本におけるコンタクトレンズ利用の現状が語られた。同社 事業統括部 白井 紀章氏は、2015年12月時点で、コンタクトレンズを使っている人は約1,700万人(レンズの種別問わず合算)と発表。毎年、新規の使用開始者が60万人増加する一方で、使用を中止する人は同程度存在しており、その中止理由は目の乾燥や痛み、充血といった不快症状だったという。
また、昨今の「目の使い方」についての調査報告も同時に行い、デジタルデバイスとの接触時間が年々増加していることを指摘。PC・タブレット端末・スマートフォン・携帯電話を合算すると、2011年から2015年で、接触時間は約1.5倍になっていることを挙げ、過去に比べて人々の目が乾きやすく、また疲れやすくなっている状況を示し、仕事などで目を酷使する人に向けて同製品を展開していくと述べた。
ちなみに、同社は目の乾きを防ぐ素材を使った2週間交換タイプレンズ「アキュビュー オアシス」を2007年から展開している。白井氏によれば、当時は多くの眼科医から「ワンデータイプの販売予定はないか」と尋ねられたという。だが、ワンデータイプとなると量産化が必須で、当時はコスト面などで折り合いがつかず、デジタルデバイスの普及による需要増加の見通しなど状況が整ったことで、今回9年越しに商品化が実現したのだという。
涙と一体化するレンズ設計
コンタクトレンズをつけたことで「目が乾く」「目がかすむ」などの不快感が生じるのは、装用によって涙の層が分断されるのが原因だ。眼球の表面におけるムチンの含有量が減ることで涙の層を保ちにくくなり、まばたき時の摩擦が増え、これらの不快症状が起こってしまう。
一方、今回発売される「ワンデー アキュビュー オアシス」は、涙に含まれる粘着性の物質「ムチン」に似た成分であるPVP(親水性高分子)をレンズ全体に組み込んだことで、涙の層が安定して目の表面に張られるため、乾燥やかすみ目が起こりにくいのだという。
続けて、コンタクトレンズ処方における乾き目へのアプローチや同製品の臨床評価などについて、しおや眼科 塩谷 浩医師がプレゼンテーションを行った。眼科医がコンタクトレンズを処方する際、医師は個々人の症状に応じて適した製品を選択しているという。
目の乾きに対してはまず装用期間を短くしようと考えるため、2週間交換タイプよりは1日使い捨てタイプが好ましくなる。また、素材の選択としても、ハイドロゲル素材を使っているとしたら、さらに保水力の高いシリコーンハイドロゲル素材(今回の新製品はこちらに該当)を選ぶそうだ。
そして、それでも乾燥が起こる場合に初めて、コンタクトレンズ装用者にとっては一般的な対処である「点眼薬」を処方し、それでもなお適合しない場合に使用中止を判断するのだそうだ。塩谷医師は、「誤使用の可能性が減る1日交換タイプで、保水力の高い素材を用いたこのレンズは画期的と感じる」ともコメントした。
なお、同製品はビジネスシーンでの利用、30~40代の会社員を主軸に販促していくものの、「目の乾きが気になる方には広くお試しいただきたい」(同社 白井氏)とのことだ。
価格帯や機能面、使用サイクルから見て、同社の「ワンデー アキュビュー トゥルーアイ」の上位版と感じる同製品。スマートフォンやPCによる目の負担が大きくなっている昨今、デザイナーやイラストレーター、エンジニアなど、デジタル機器が業務に不可欠な職種をはじめ、コンタクトレンズの乾燥感に悩む人の新たな選択肢となりそうだ。