睡眠中に呼吸停止発作を繰り返す睡眠時無呼吸症候群の患者は発作時に眼圧が下がることを、北海道大学の研究グループが睡眠中の眼圧モニターで明らかにし、このほど米眼科専門誌に発表した。患者は緑内障になりやすいとされているがその理由は不明だった。無呼吸発作と緑内障との関係を解明する手掛かりになる研究成果として注目される。

睡眠時無呼吸症候群は、肥満の中高年男性に多く「無呼吸が1時間5回以上」などいくつかの基準に合うと患者と診断される。患者は推定200万人、軽症者を含めるとその数は推計できないほど膨れ上がると言われる。脳梗塞や心筋梗塞など血管系の病気のリスクも高い。緑内障は、視神経が損傷して視野が狭くなったりかすんだりする。40歳以上の約5%が緑内障との推計もある。多くは原因不明で放置すると失明の危険もある。

研究グループによると、睡眠時無呼吸症候群の患者は健常者と比べて緑内障になるリスクが約10倍高いという。睡眠時無呼吸症候群と緑内障発症との関係については、無呼吸により眼圧が上昇して緑内障になるとの見方もかつてはあったが、眼圧が正常な緑内障も多く報告されて詳しいことは分かっていなかった。

睡眠中の患者の眼圧を持続的に正確に測る技術はこれまでなかった。北海道大学大学院医学研究科の石田晋(いしだ すすむ)教授、新明康弘(しんめい やすひろ)助教らは、スイスの企業が開発したコンタクトレンズ型眼圧計を用いて睡眠中の患者の眼圧を5分ごとに30秒間記録した。同じ患者に対し同時に呼吸やいびき、心電図などを「睡眠ポリグラフィー」で記録して睡眠状態をモニターした。

息を止めると通常眼圧は上昇する。今回の研究グループが、眼圧と睡眠状態の測定データを比較、分析した結果、無呼吸発作の場合は、気道が閉塞して息が吸い込めなくなるために胸腔(きょうくう)内の圧力が下がって眼圧も下がることが明らかになった。

研究グループは、無呼吸発作が起きると眼圧が下がると同時に血中酸素飽和度も低下して脳内が低酸素状態になり、その結果視神経障害が引き起こされると考えられる、としている。

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