東北大学などは6月1日、倒壊瓦礫内捜索用のヘビ型ロボット「能動スコープカメラ」に複数のマイクロフォン(マイク)を搭載し、瓦礫奥深くの要救助者が発する声を聞き取るシステムの開発に成功したと発表した。

同成果は、東北大学 田所諭教授、昆陽雅司准教授、奥乃博教授、京都大学 糸山克寿助教、坂東宜昭特別研究員、東京大学 猿渡洋教授、筑波大学 牧野昭二教授、国立情報学研究所 小野順貴准教授らの研究グループによるもので、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の「タフ・ロボティクス・チャレンジ」によって得られた。

能動スコープカメラは、内視鏡の表面に分布型振動駆動のためのアクチュエータを搭載することによって、瓦礫や配管などの数cmの瓦礫の隙間をぬって深さ数mまでの探査ができるヘビ型のロボット。これまで、建設現場倒壊事故原因調査などに使用されてきた。

今回、同カメラの構造を、柔軟チューブを用いた新しい設計に変更することによって、バス方式で接続された多数のマイクを一定間隔で搭載し、マイクアレイを構成することが可能になった。これにより、同カメラを瓦礫内に進入させた際、多数のマイクを瓦礫内に分布させることになり、要救助者の音声を多数の位置で、位置情報も含めて取得することが可能となる。

また、このシステムの特性を生かした音声抽出・強調を行うために、VB-MRNMFによる方式およびIVA+ポストフィルタによる方式を開発し、同カメラに搭載することに成功。前者は、リアルタイムで音声強調が可能な方式。後者は数十秒の事後解析の処理時間が必要だが、より鮮明な音声を得ることができる。

同研究グループは、熊本地震の現地調査に基づき試験評価用の瓦礫を製作し、実証実験を実施。これまでと比較して飛躍的に高い聞き取り性能を確認したという。今後は、災害救助システムとしての実用化を進めていく考えだ。

能動スコープカメラ(左)と搭載した複数のマイク(右)