独立系半導体ナノエレクトロニクス研究機関であるimecは、5月24~25日にベルギーのブリュッセルで年次業績報告・計画発表会「imec Technology Forum (ITF) Brussels 2016」を開催するにあたって、独Infineon Technologiesと車載レーダー用CMOSベース79GHzセンサチップの開発を共同で進めていることを公表した。この研究協業に関してはInfineonも同タイミングで発表を行っている。

この共同開発はimecからは独自の高周波システム、回路、アンテナの設計技術を、Infineonからはレーダーセンサチップの知識・経験を持ち寄って進められており、完全自動運転車の実現に向けた重要な1段階として、28nm CMOSプロセス技術を使ったセンサチップの試作品を2016年第3四半期に完成させる計画としているほか、完全な形でのレーダーシステムの実演も2017年初頭に行う計画としている。

図1 InfineonのRalf Bomefeld氏

運転支援機構を搭載している現在の自動車には、最大3台のレーダーシステムが組み込まれているが、将来の完全自動運転車では、最大10台のレーダーシステムに加えて、カメラかLidar(light detection and ranging:光検出および測長)技術を採用したセンサシステムをさらに10台搭載するようになると見られる。

Infineonのセンサおよび制御担当VP兼ゼネラルマネージャのRalf Bomefeld氏(図1)は「Infineonは、部分的にあるいは完全に自動化した車両を、レーダーをベースにして、繭(まゆ)のように安全でそっくり包んでしまうことができるようにすることを目指している。将来、私たちは自動駐車などの用途に向けて、1チップのCMOSプロセスでレ―ダセンサを製造する予定だ。Infineonはレーダー技術と品質の業界標準を制定する作業を引き続き行っていく」と述べている。

図2 imecのWim Van Thillo氏

一方、imecの同プログラム・ディレクターのWim Van Thillo氏(図2)は、技術面に関して「主流の24GHz帯域に比べて77GHzや79GHz帯のほうが、距離を精密に測れ、ドップラーおよび角度分解能が高い。これらの利点を生かして、クルマのような大きな物体だけではなく、歩行者や自転車も検出できるようにして、すべてにわたって安全な環境を実現できるようにしたい。このために、低コスト、低消費電力、高効率な集積MIMO(multiple input/multiple output)アンテナ搭載のレーダーを実現するのが目標だ」と述べている。