ソニーは5月24日、都内で記者会見を開き、熊本地震の発生により、発表を見合わせていた2016年度の業績見通しを公表した。

2016年度の業績見通しを説明するソニー 代表執行役副社長兼CFOの吉田憲一郎氏

それによると、売上高は前年度比3.8%減の7兆8000億円で、営業利益も熊本地震の影響により、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野で約450億円、デバイス分野で約600億円、全社共通で100億円の計1150億円の損失が生じる見込みとしているものの、モバイルコミュニケーション(MC)分野の損益改善やゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の増益などの効果もあり、同2%増の3000億円としている。

今回の発表は、2016年4月28日に発表した2015年度連結業績発表の時点で、影響の範囲が把握しきれなかったことから発表を控えたMC分野、G&NS分野、IP&S分野、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野、デバイス分野および連結全体の2016年度見通しを改めて公開したもので、2016年度のセグメント別業績見通しとして、映画分野、音楽分野、金融分野に関しては4月28日に発表された値からの変更はない。

各事業分野別に見ると、MC分野は高付加価値モデルへの集中による主に普及価格帯スマートフォンの販売台数減少および、2015年度に事業縮小を図った不採算地域における販売台数の減少により、減収の見通し。営業損益については減収の影響があるものの、製品ミックスの改善、構造改革の効果などによる費用削減、および構造改革費用の減少が見込まれることにより改善し、利益の計上が予想されている。

またG&NS分野はネットワークを通じた販売を含む、「PlayStation 4(PS4)」の販売台数の増加ならびに同ソフトウェアの増収により増収の見通し。営業利益については「PlayStaion 3」のソフトウェアの減収があるものの、PS4ソフトウェアおよびハードウェアの増収により増益を見込んでいる。

IP&S分野はデジタルカメラや放送用・業務用機器などの減収により、分野全体で大幅な減収となる見通し。営業利益についても、費用の削減などによる増益要因があるものの、減収の影響が大きく大幅な減益が見込まれるという。なお、減収には熊本地震の影響で部品調達が遅れることによる売り上げの減少が含まれているという。

HE&S分野は為替の影響および市場縮小に伴う家庭用オーディオ・ビデオの販売台数の減少などにより、大幅な減収が見込まれている。営業利益についても費用削減や製品ミックス改善などで減収分を補うものの、事業の分社化および本社機能再編の一環として負担する本社費用、ブランド、特許権使用によるロイヤリティなどの算出方法を変更したことによる費用の増加などにより、大幅な減益が見込まれている。

デバイス分野の売上高はモバイル機器向けイメージセンサの増収があるものの、主に為替の影響により分野全体でほぼ前年度並みに落ち着くとの見通し。営業損失については、2015年度にカメラモジュール事業の長期性資産の減損596億円や電池事業の長期性資産の減損として306億円の計上があったが、熊本地震による影響、一部のカメラモジュールの開発・製造の中止に伴う費用の発生、為替の影響などで、損失が拡大すると予測されている。

熊本地震による悪影響は売上高が地震前の想定を下回ることによる機会損失や復旧に関連する費用の発生に加えて、売上高に応じて配賦される固定費の減少などが含まれる。また、熊本テクノロジーセンターで量産に向けた準備を行っていた外販向けの高機能カメラモジュールについて、長期的観点から事業方針の再検討を行った結果、その開発・製造の中止を決定。これにより、約300億円の費用が発生する見込みだという。

2016年度のセグメント別業績見通し

なお、2016年4月14日以降に発生した熊本地震の影響により、主にデジタルカメラや監視カメラ向けのイメージセンサおよびディスプレイデバイスの基幹工場であるソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本テクノロジーセンターは、地震発生直後より生産活動を停止していたが、同テクノロジーセンターの低層階に位置するウェハ工程は5月21日より順次稼働を再開し、現在は徐々に稼働率を上昇させている。また、高層階に位置する後工程の一部である測定工程および組立工程など、そのほかの工程については5月中旬より段階的に稼動を再開している。