4月28日、日銀は金融政策決定会合において、金融政策の現状維持を決定した。熊本地震を受けて被災地金融機関支援オペの導入はあったものの、追加緩和期待に対してほぼ「ゼロ回答」だった。

22日に「日銀が金融機関向け貸付にマイナス金利を検討へ」との一部報道が伝わったことも追加緩和期待を高めていた。しかし、黒田総裁は会見で、「貸付のマイナス金利は議論していない」とにべもなかった。

日銀の決定を受けて、日経平均が大幅に下落し、急激な円高が進行した。日銀は、そうした金融市場の反応をある程度想定できたはずだ。では、「ゼロ回答」の真意は何だったか。

会見の冒頭で、黒田総裁は「政策効果の浸透を見極めていくことが適当と判断した」と決定の理由を明かした。素直に受け取れば、今年1月に導入したばかりのマイナス金利の効果がまだ判然としないということだ。ただ、総裁は「1、2か月で出てくるものではないが、半年、1年とはかからない」とも語った。そうであれば、今後数か月以内に新たな措置を打ち出す可能性は十分にあるだろう。

金融市場では、国債購入にしても、マイナス金利の拡大にしても、日銀に残された手は限られており、それらを「温存した」との見方も根強い。これについても黒田総裁は、「(必要なら)量、質、金利の3つの次元で追加的な緩和措置を講じる」、「(国債の流動性低下など)大きな問題は生じていない」、「まだいくらでもマイナス金利を深掘りすることができる」などと強気の姿勢を崩さなかった。

5月26日~27日には伊勢志摩サミットが開催され、その直前にはG7財務相・中央銀行総裁会議がある。そして、6月1日には通常国会が会期末を迎える。それらのタイミングで、安倍政権が消費増税延期の有無を含めて包括的な経済対策を打ち出す可能性がある。そうであれば、その後に日銀が追加緩和に踏み切っても、国際社会から「金融政策依存」あるいは「通貨安誘導」との批判は免れるかもしれない。

一方で、日銀が「マイナス金利付き量的・質的緩和」の限界を感じている、あるいはトータルでみて便益よりも弊害が大きいと判断しているのであれば、いつまでも「ゼロ回答」が続くのかもしれない。

果たして、日銀の真意はどこにあったのか。次回6月15-16日の金融政策決定会合、あるいは次の「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」が公表される7月29日の会合で、その答えがある程度明らかになるかもしれない。

執筆者プロフィール : 西田 明弘(にしだ あきひろ)

マネースクウェア・ジャパン 市場調査部 チーフエコノミスト。1984年、日興リサーチセンターに入社。米ブルッキングス研究所客員研究員などを経て、三菱UFJモルガン・スタンレー証券入社。チーフエコノミスト、シニア債券ストラテジストとして高い評価を得る。2012年9月、マネースクウェア・ジャパン(M2J)入社。市場調査部チーフアナリストに就任。現在、M2JのWEBサイトで「市場調査部レポート」、「市場調査部エクスプレス」、「今月の特集」など多数のレポートを配信する他、TV・雑誌など様々なメディアに出演し、活躍中。

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