チェルノブイリ原発事故から30年。放射能による汚染は、付近一帯の生物にどのような影響を及ぼしているのか。その実態を知ることができる番組『特集:あの日の爪痕 チェルノブイリ:生き物たちの今』が、26日から動物・自然専門チャンネル「アニマルプラネット」で放送される。
同番組では、2人の科学者を現地に派遣。立ち入り禁止区域内に足を踏み入れ、放射性降下物が30年間で及ぼす影響を科学的に調査する。事故によって放出された放射性物質は、広島型原爆の400倍、福島原発事故の5倍以上とも言われ、30年が経過した今でも約30キロ圏内は許可無く入ることはできない状態だ。
事故発生当時、生物の生存は不可能と思われていたが、オオカミやキツツキの鳴き声が聞こえ、さらには絶滅危惧種・モウコノウマの群れまでも。そこはまさに野生生物の宝庫とも言える一方、モウコノウマのフンを採取して分析したところ、高い放射性セシウムを検知。低線量の地域でも同様の結果で、体内に蓄積していることが判明した。
また、元住民が禁止区域内にひっそりと永住しているケースも。イバンとマリアは、事故の2年後に戻った。避難先の住民から悪い噂を流され、差別の目に耐え切れずに帰る道を選んだという。現在は、ニンジンやトウモロコシなどを育てながら自給自足の生活を送っている。
調査チームは、致死的汚染レベルの一帯にも潜入。事故当時に絶命(枯れ木ではない)した木が赤く変色したことから"赤い森"と呼ばれ、その多くが腐食することなく不気味に残っている。大量の放射線は、微生物やバクテリアなど腐敗を促す生物をも一掃してしまった。生き延びた虫の中にも変異が見られ、一見普通のクモでも巣を調べると形が不規則。ちなみに最も環境に適応した虫は、ゴキブリではなくアリ。放射線の影響を受けにくい地下で繁殖しているからだ。
そして、今回の最も大きな挑戦だったのが"石棺"といわれる4号炉付近の調査。致死量のプルトニウムやウランが含まれる冷却池には怪物魚が隠れているという噂があり、水中カメラで確認したところ調査員は「すごい」「すばらしい」と興奮。多くの魚が泳ぐ中、底から姿を表したのが2メートルを超えるヨーロッパオオナマズだった。また、周辺では多くの鳥が損傷する一方、まれに無傷のシジュウカラも。それらに共通するのは、「順応性の高さ」だった。
『特集:あの日の爪痕 チェルノブイリ:生き物たちの今』は4月26日(23:00~24:00)、5月11日(12:30~13:30)、5月15日(19:00~20:00)、5月17日(7:00~8:00)、5月22日(4:00~5:00)に放送される。
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