4月21日、オープンソースの汎用プログラミング言語「Python(パイソン)」のエンジニアを育成するための「Pythonエンジニア育成推進協会」が発足した。
PythonはJavaやRubyなどの他言語と比較すると「ミニマムで可読性が高く、バージョン互換にすぐれた言語」であることから、特に米国において人材の需要が高い。
日本国内でも需要が増加しつつあることを受け、同協会は試験や教育を通してプログラミングフィロソフィー「Pythonic」を共有するエンジニア育成を支援していく予定。
説明会では、発起人の1人である寺田学氏(CMSコミュニケーションズ 代表取締役、PyCon JP代表理事)が「PythonがOS基盤分野としてデファクトスタンダードになりつつある」と説明した。
PyconJPは日本最大のPythonイベントを主催する社団法人。代表理事を務める寺田氏によれば、近年、機械学習やビッグデータ関連の問い合わせが増加しており、Pythonが実践的に使えるコンピュータ言語として認知されつつあるとともに、Google Appエンジンなどなど、利用が多方面に広がっているそうだ。特にLinux分野では、シェルスクリプトと合わせて基本ツールになってきていると語った。
また、発起人代表の吉政忠志氏(吉政創成 代表取締役)は、「機械学習市場や第3次AIブームをうけ、Pythonのエンジニア需要が直近3年で急激に伸びている」と説明した。
昨年の米国のエンジニア求人成長率では、Rubyに続いて2位につけており、求人件数も4万3883件と、Javaに続く2位だったとのこと(2015年12月時点で、Javaの求人件数は8万8760件、Rubyの求人件数は1万9993件)。
日本国内におけるPythonの求人数は2016年4月時点で3248件(Java3万665件)と大きなギャップがあるが、求人件数の増加率は252%と主要な10言語の中でトップであり、これから大きく拡大する市場であることがうかがえる(いずれも米Indeed調べ)。
また、国内において、Pythonエンジニアの平均給与は651万円(Javaエンジニアは499万円)と、市場価値が高い。主な需要が機械学習やロボット向けアプリケーション開発であることから、平均給与の高さは、案件の単価が高いことも関係しているそうだ。
認定試験は主教材にオライリー・ジャパン発行の書籍『入門Python3』と『Pythonによるデータ分析入門』を活用し、試験も2種類用意される。
1つは「Python3エンジニア認定基礎試験」で文法基礎を問う試験で、40問出題のうち、70%正解で合格となる。もう1つは「Python3エンジニア認定データ解析試験」で・Pythonを使ったデータ分析の基礎や方法を問う試験で、40問出題のうち、70%正解で合格となる。
今年7月から来年1月にかけて計4回のベータ試験を無償で開催し、合格者は本試験同様の認定を受けることができる。ベータ試験が終了した後、来年4月より本試験を開始する。本試験の受験料は1万円(学割5000円)、CBT試験となり、全国200カ所の試験会場で、いつでも受験可能な体制を整える。
さらに同協会は、健全なPython人材を育成するため、プログラミングフィロソフィーの啓蒙も進める。
Pythonには、使用者によって共有されている「Pythonを最も有効に使うための理念」がある。明文化された厳密な定義はないが、共有者の間では「Pythonic(パイソニック)」と呼ばれ、以下の条件を満たしていると望ましいとされる。
- 適切にPythonのイディオムが使用されている(言い回し)がうまく使われている
- Pythonコードの書き方として、自然で流暢な感じである
- ミニマリスト的哲学とマッチしていて、読みやすさが重視されている
一方、「理解しづらい」「別の言語からそのまま翻訳してきただけのような書き方がしてある」といったコードは、Pythonのプログラミングフィロソフィーにマッチしないとして「Unpythonic」であるとされる。同協会は今後、日本語でPythonicを明文化していく作業も進めていく。