国土交通省は4月19日、羽田空港機能強化方策の具体化に向けた取り組みとして、2015年12月より実施していた第2フェーズの説明会での結果概要を発表。説明会であがった意見等も踏まえた環境影響に配慮した方策として、専攻して検討していた都心上空を飛ぶ新飛行経路に関して、騒音・安全対策の観点から一部修正する。

新飛行経路の修正として、到着経路の進入を開始する高度を引き上げるとともに東側に移設する(悪天候時以外)

羽田空港の機能強化・国際線増便は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを円滑に開催すること以外にも、訪日外国人を呼びこむことで日本全国の経済活性化、首都圏の国際競争力の強化、また、国内線と国際線を結ぶことで地方活性化等を目的にしている。

そのための方法として、運用時間を限定して都心上空を飛ぶ新飛行経路を設定すると、1時間当たりの発着回数を現行の80回から90回まで増やすことができるという。深夜・早朝時間帯以外の国際線に関しては、年間約6万回の現状から2020年には年間約9.9万回と、最大で年間約3.9万回(約1.7倍)の発着回数の増加が可能になる計算となる。南風時に限って運用するものの、この新飛行経路は都心上空となるため、国土交通省は説明会を通じて騒音や安全対策も含めた今後の取り組みを説明するとともに一般から意見を求めてきた。

騒音レベルを体験できるよう、第2フェーズの説明会では音を体験できるコーナーが設置された

第2フェーズの説明会は2015年12月11日~2016年1月31日にかけて、東京都・神奈川県・埼玉県の18会場で開催。会場では、飛行経路の見直しが提案されている理由や騒音・安全対策についての方向性などを、パネル展示やヘッドフォンを用いた音体験で説明を行った。第2フェーズの説明会には約5,100人が来場し、約4,500件の意見が届けられた。

第2フェーズの説明会であがった声は第1フェーズであった意見(約6,000人が来場/約5,900件の意見)と合わせ、「羽田空港国際線増便の必要性と実現方策 」「 課題への対応方策(対策や運用方法の工夫等)」「進め方(全体)」の観点から、意見数の多寡に関わらず意見要旨として国交省のホームページ上で公開されている。

それらの意見の中には、「説明を聞いて、自分が住んでいる地域への音の影響がよく理解できた」「なぜこのような新飛行経路が提案されているのかは理解できた。引き続き、影響を軽減するための方策を検討してほしい」等、説明会で理解が深まった声があるほか、「都心部への騒音影響がより小さい北風運用を優先的に使ってほしい」「音というよりも省エネ・環境保全の観点から、住宅の二重窓助成ができないか。それが結果的に防音にもつながる」等と提案する意見もあった。

今後は説明会で寄せられた意見も踏まえ、夏までに環境影響に配慮した方策の策定を予定。具体的には、騒音影響を軽減する飛行経路の運用方法の工夫、より静かな航空機の使用などの環境対策、落下物対策を含めた安全対策など、多面的に検討していく。

新飛行経路を一部修正することで、3,000ft以下で飛行するエリアが削減できる見通しとなっている

そのうち、飛行経路案の一部修正は先行して検討。新飛行経路の運用方法の工夫のひとつとして、南風時の新飛行経路案については陸域全体への騒音影響を小さくするとともに、周辺の飛行場に離着陸する航空機との安全間隔を確保する観点から計画を修正する。

修正後の計画では、悪天候時以外には到着経路の進入を開始する高度を引き上げるとともに東側に移設する。この修正により、3,000ftが4,000ft(2~4db程度の軽減)に、3,000ftが5,000ft(4~7db程度の軽減)になるなど、3,000ft以下で飛行するエリアを削減できるという。なお、今回提案する経路については、使用する着陸方式が悪天候時には使用できないことから、悪天候時には従来から提案している経路を使用することを想定している。