JAXA、「革新的衛星技術実証1号機」のテーマを選定 - 2017年度に打ち上げ

 

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2月9日、昨年秋に募集していた「革新的衛星技術実証1号機」に搭載する実証テーマの選定結果を発表した。選ばれたテーマは、小型衛星への搭載機器や超小型衛星などとして開発され、2017年度に「イプシロン」ロケットで打ち上げられる予定となっている。

革新的衛星技術実証プログラムは、イプシロン・ロケットの打ち上げ機会やH-IIAロケットの余剰能力を活かして小型衛星や超小型衛星を打ち上げることで、民間企業や大学などが開発する革新的な技術や部品の軌道上実証を適時かつ安価に実施することを目的としたもの。

人工衛星に使われている宇宙用部品の安定供給は、国内の宇宙利用を進めるプロジェクトを支える産業や科学技術の基盤として重要な課題となっており、政府が定めた宇宙基本計画でも「宇宙システムの基幹的部品等の安定供給に向けた環境整備」の実施が掲げられている。

このプログラムはその一環として実施されており、宇宙分野を支える技術基盤・産業基盤の持続的な維持や発展、衛星産業の国際競争力の獲得・強化や、新規の民間企業などの参入による宇宙利用拡大、またチャレンジングかつハイリスクな衛星技術・ミッションの開発・実証機会を確保することなどが目指されている。

第1回となるテーマは昨年10月から11月にかけて募集が行われ、応募のあった32テーマの中から、

  • ミッションの意義・価値(衛星技術/競争力向上、イノベーション創出、宇宙産業活性化に資する可能性等)
  • 技術的実現性(インタフェース要求、安全要求等への適合性、開発実現性等)

の2つの観点で、革新的なFPGAや低毒・低コストな衛星用スラスター、高性能な地球観測機器、展開式の構造物の試験や実証など、計12テーマが選定された。

JAXAは今後、打ち上げに向けて、必要な取決めの締結、技術調整、安全審査などの準備を進めていくとしている。また今後の設計を進める中で搭載リソースの余剰が確保できた場合には、実証テーマを追加する可能性もあるという。

打ち上げは2017年度に、イプシロン・ロケットで行われる予定となっている。

イプシロン・ロケット (C) JAXA

革新的衛星技術実証プログラムの概要 (C) JAXA/文部科学省

イプシロン・ロケットへの衛星搭載図(想像図) (C) JAXA/文部科学省

区分 テーマ名称 所属機関 主な選定理由
区分 革新的FPGAの耐宇宙環境性能軌道上評価 日本電気 耐放射線性を向上でき、低消費電力、小型化、低コスト化により衛星のシステム競争力向上に大きく寄与出来る可能性がある。
コンポーネント X帯2-3Gbpダウンリンク通信の軌道上実証 慶應義塾大学 Xバンドの限られた帯域の中で超小型衛星における世界最大速度の通信(従来実績の6倍)を実現することで、超小型衛星では従来不可能であった大容量データを扱うことも可能となり、衛星の競争力向上に資する。また、世界最高性能の製品で海外展開により市場シェアの獲得も期待できる。
革新的船舶情報受信システムの実証実験 IHI 船舶が密に存在する海域での船舶信号の捕捉・識別率を向上する技術は、従来の課題を解決するものであり、衛星搭載型船舶自動識別装置(AIS)としての価値を高め、国内の衛星需要を喚起することを期待できる。また、海外システムに対する国際的優位性の確保が期待できる。
グリーンプロペラント推進系(GPRCS)の軌道上実証 宇宙システム開発利用推進機構 低毒・低コストであることから、衛星システムの適用で競争力向上や海外への展開につながる。世界的に低毒推進系は競争が盛んで成長が見込まれる分野であり、早期に軌道上実証が必須である。
粒子エネルギースペクトロメータ(SPM)の軌道上実証 宇宙システム開発利用推進機構 商用衛星の確実な作動のためには、宇宙環境モニタ装置の搭載需要が存在しており、今後の商用衛星の打ち上げ数増加に伴い市場の成長が期待できる。さらに、本プログラムのバス機器の一つとして本モニタ装置を搭載することで、半導体素子等の評価にも活用できる。
深層学習を応用した革新的地球センサ・スタートラッカの開発 東京工業大学 画期的な手法による低コストで高精度な 地球センサやスタートラッカが実現すると、超小型衛星の価格競争力向上につながる。地上シミュレーションで実現性は確認されているが、軌道上で実証することで有用性を確認できる。
軽量太陽電池パドル機構 宇宙航空研究開発機構 従来の太陽電池パドルと比較して1/3という大幅な軽量化が可能であり、これによる質量減分を衛星システムの低コスト化や多機能化に振り分けることができる。特に、軽量化要求が厳しい電気推進を全面採用した「オール電化衛星」のニーズと合致する。展開構造の軌道上実証は、実績確保のため必須である。
超小型・省電力GNSS受信機の軌道上実証 中部大学 切手サイズのGNSS受信機は、従来製品と比較して、小型、低コスト、低消費電力という特長を兼ね備え、超小型衛星の運用を自動化するなどの刷新が期待できる。
超小型衛星 海外新興国への衛星開発教育支援により衛星利用及び海外市場を拡大するための地球観測マイクロ衛星の提案 前野 隆司
慶應義塾大学
これまで宇宙利用をしていなかった新興国の人々に、競合の1/10という低コストな宇宙利用機会を提供することにより、宇宙利用の拡大を期待できる。新興国のキャパシティビルディングという国際貢献・国際協力により、我が国のプレゼンス向上にもつながる。
高空間分解能スペクトル撮像技術の確立による新規地球環境計測及び農林水産鉱業市場の開拓と海外衛星利用市場の拡大 東北大学 人工衛星として初めて、5mの分解能と観測帯域600バンド以上の中から目的に応じて10バンド程度を自在に選択できる高性能な観測手段であり、競争力は極めて高い。小型衛星によるリモートセンシング市場へのビジネス展開というベンチャー構想も期待が大きい。
キューブサット 3Uキューブサットによる高機能展開膜構造物の宇宙実証 東京工業大学 大型構造物の実現にこのような展開構造物は不可欠であり、将来の衛星のシステム競争力向上に資する。また、展開型アンテナや空気抵抗を利用した CubeSatのデブリ化を防ぐ軌道高度低下用ドラッグシュート等、多様な応用が期待できる。柔軟構造物は、地上実験が困難であり、軌道上実証に意義がある。
ルーナーホライゾングロー撮影を目指した、パルスプラズマスラスタによるCubeSatの姿勢・軌道制御と超高層大気撮像高感度カメラの実証 九州工業大学 小型推進系の搭載および高感度カメラによる地球外縁部の超高層大気発光現象の観測は、将来、深宇宙探査というキューブサットにとって新しい応用領域を拓く可能性がある。

参考

・Pick Up:研究開発部門
http://www.ard.jaxa.jp/pickup/kakushin.html
・革新的衛星技術実証及び超小型衛星の打上げ・放出機会提供|JAXA新事業促進部
http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/ainori/
・革新的衛星技術実証|革新的衛星技術実証及び小型・超小型衛星の打上げ・放出機会提供|JAXA新事業促進部
http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/ainori/kakushin.html
・革新的衛星技術実証グループ:研究開発部門
http://www.ard.jaxa.jp/research/jissyou/jis-index.html
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