東京医科歯科大学(TMDU)は1月26日、がん幹細胞が自らの生存に適した環境(がん幹細胞ニッチ)を構築する生存戦略を執ってがんの拡大に至る仕組みを突き止めたと発表した。

同成果はTMDU難治疾患研究所幹細胞制御分野の田賀哲也 教授、椨康一 助教らの研究グループと、英エジンバラ大学、国立がん研究センター研究所との共同研究によるもの。1月29日(現地時間)に国際科学誌「Stem Cells」オンライン版に掲載される予定。

がん幹細胞は、がんの治療抵抗性と再発を担う細胞であると考えられており、その生存を維持するニッチを破壊することでがんの根治が可能になると期待されているが、その実態は詳しくわかっていない。

今回の研究では、日本人で最も頻度の高い脳腫瘍であるグリオーマのがん幹細胞を用いて、数百種類の合成ポリマーの中からがん幹細胞ニッチの機能を持つポリマーを同定し、このポリマー結合分子の解析から、脳腫瘍のがん幹細胞ニッチ構成成分として細胞外基質と鉄を特定した。また、細胞外基質を分泌する血管内皮細胞にがん幹細胞自身が分化し、鉄を細胞内に蓄えるマクロファージをがん幹細胞が誘導するという、がん幹細胞の利己的な生存戦略の仕組みを明らかにすることができた。

同研究グループは、「今後このがん幹細胞の利己的な仕組みを標的とした新規がん根治療法の開発が期待できます。」とコメントしている。

がん幹細胞によるニッチの構築

がん幹細胞によるニッチ構築機構の発見と、それを標的としたがん根治の可能性