宇宙航空研究開発機構(JAXA)は1月26日、小惑星探査機「はやぶさ」で培った電力制御技術を活用した「デマンドコントローラ(デマコン)」のデモンストレーションを公開した。

「はやぶさ」では宇宙機として初めて電力のピークカット技術が導入されていた。JAXAは同技術をエネルギーマネジメントシステム(EMS)に活用する取り組みを進めており、今回の技術開発はその流れを汲むものとなる。

デマコンとは、同時に使用されている機器の消費電力を監視し、設定された規制値を超過しないように警告や自動警告を行う装置のこと。従来のデマコンは、基本的に事業所向けで、あらかじめ決められた優先度に従って、電気の遮断・停止、削減を行う機能に限定されている。優先度を収集して、デマンド削減の指令を与えるためには双方向の通信が必要なためシステムが複雑化するほか、機器によってはインバーター化されていない場合があり、きめ細かい調整能力を得ることができない。

これに対し、今回の技術は、変動する個々の機器での優先度に対しても、サーバーを要さずにきめ細かい電力の割り付けを可能とするもので、事業所だけでなく家庭でも高機能なデマコンの導入を可能とし、電気料金の低減・エコなどのメリットがある。

一方向の通信のみで機器を制御

JAXAは今回、家庭向けと事業所向けソリューションのデモを実施した。

家庭向けソリューションは、全体の電力消費量を監視するセンシングモジュール、その情報を各機器に展開するメディアコンバーター、メディアコンバーターから情報を受け取るスマートブレーカーという構成になっている。仕組みとしては、設定した規制電力を超過したときに、センシングモジュールがどれくらい超過しているのかという情報をメディアコンバーター経由で各機器が接続されているスマートブレーカーに送信する。各スマートブレーカーは送られてきた情報をもとに並列処理を開始し、その時点で一番電力を消費しているコンセントが切れる。

家庭用デモンストレーション電子レンジ、IHクッカー、ヒーター、ドライヤーがスマートブレーカーにつながれている。

センシングモジュール。配電盤に簡単に取り付けられる。

メディアコンバーター。通信はZigBeeで行う

スマートブレーカーにはコンセントに組み込まれているタイプ(左、スマートアウトレットブレーカー)と外付けタイプがある(右、スマートアダプタブレーカー)がある。

例えば、電圧が100Vの住戸で使用可能電力が10Aに設定されている時に、800Wを消費するIHクッカーと600Wを消費するドライヤーを同時に使用した場合、合計消費電力は1400W(14A)となり上限値を超過してしまう。そうすると、各スマートタップが並列処理を開始し、より電力を消費しているIHクッカーが自動的に切れるというわけだ。

このソリューションでは、機器を切るべきかどうかは各スマートブレーカーが判断するため双方向の通信が必要ない。また、スマートブレーカーを付け替えるだけで電力制御の対象とする機器を変更することができるほか、既存のコンセントと混在していても運用が可能なため、各家庭ごとの家電製品の使用状況に柔軟に対応することができる。

一方、事業所向けソリューションはエアコンの電力制御にフォーカス。仕組みとしては家庭向けと基本的には同じで、センシングモジュール、メディアコンバーター、レシーバーモジュールを用いる。デモでは、業務用エアコンにレシーバーモジュールを取り付けることで、消費電力が設定値を超えた時にエアコンが自動で電力削減モードへ切り替わるようになっていた。

エアコンの右下に取り付けられているのがレシーバーモジュール

天カセ型でも対応可能

同ソリューションは電力制御機能のほか、既存の機器をほとんど改造すること無く導入可能であるため、導入経費が低く済むこともメリットであり、販売に向けてJAXAは家庭用は6-8年、事業所用では数年で元が取れるような末端価格を目指したいとしている。