東京・丸の内の東京ステーションギャラリーは、パリ・リトグラフ工房idemで制作されたリトグラフ作品を展示する「君が叫んだその場所こそがほんとの世界の真ん中なのだ。」展を開催している。会期は2月7日まで(月曜休館)。開館時間は10:00~18:00(金曜は20:00まで)。入館料は一般1,000円、高校・大学生800円、中学生以下無料。

JR《「テーブルに寄りかかる男」(1915-1916)の前のポートレート、パブロ・ピカソ、パリ、フランス》2013年 (c)JR-ART.NET

デヴィッド・リンチ《頭の修理》 2010年 courtesy of the artist/courtesy Item éditions, Paris

同展は、アーティスト20名が制作した約130点のリトグラフで構成されるもの。リトグラフは19世紀から20世紀初頭にかけてフランスで最も花開いた石版画の技術で、その後、ピカソやマティス、シャガール といった芸術家が1940年代半ばから70年代にかけて数々の名作を生みだしたことで再び脚光を浴びた。こうした100年以上にわたるリトグラフの歴史を背景に、モンパルナスの地でその技術と創作の伝統を受け継ぎ、1990年代からアーティストとの協働を積極的に行っているのがリトグラフ工房「Idem Paris(イデム・パリ)」である。最近では、JR、ジャン=ミシェル・アルベロラ、キャロル・ベンザケンなどのフランスのアーティストをはじめ、アメリカの映画監督としても知られるデヴィッド・リンチらがこの工房の磁力に引き寄せられ、また、やなぎみわが今年ここで初めてのリトグラフ制作を行っている。同展では、このidemで制作されたリトグラフ作品が展示される。

キャロル・ベンザケン《マグノリア》 2015年 courtesy Item éditions, Paris

プリュンヌ・ヌーリー《テラコッタの娘たち#7》 2013年 (c)Prune Nourry/courtesy Item éditions, Paris

やなぎみわ《無題II》 2015年 (c)Miwa Yanagi 2015/courtesy Item éditions, Paris

また同展は、作家・原田マハの最新の小説「ロマンシエ」(仏語で"小説家"の意)と連動するもので、小説は、日本からパリに渡った主人公がidemを通じて様々な人に出会い、ここで制作された作品によって日本で展覧会が開催されるまでを描いている。最後は小説から飛び出して、読者も展覧会を実際に体験することができるというユニークなアイディアが盛り込まれている。同展のタイトル「君が叫んだその場所こそがほんとの世界の真ん中なのだ。」は、小説中の言葉からとられたもので、小説と展覧会の世界の横断がもたらす「フィクション×リアル」の新しい感覚を楽しむことができるということだ。