京都大学(京大)と物質・材料研究機構(NIMS)は12月14日、量子もつれ光を用いた超高分解能光断層撮影技術を開発したと発表した。
同成果は、京都大学大学院 工学研究科 竹内繁樹 教授、岡野真之 特定研究員ら、物質・材料研究機構 栗村直 主幹研究員ら、および名古屋大学 西澤典彦 教授からなる研究グループによるもので、12月14日付けの英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。
光干渉断層撮影技術は、眼科分野において網膜などさまざまな組織の診断技術として急速に普及している。また、肺や消化管の表層組織の断層撮影への応用も進められており、早期がんの診断などへの検討も進められている。光干渉断層撮影技術の深さ分解能を向上させるには、光源の帯域を拡げる必要があるが、その場合、光の波長ごとに光の進行速度が異なる群速度分散により、分解能が逆に劣化するというジレンマがあるため、これまで分解能は5μmから10μm程度に制限されていた。
今回、同研究グループは、非常に広い帯域を持つ量子もつれ光源を開発した。同光源では、電子ビーム露光法により形成した微細電極を用いた高精度分極反転技術により、高効率な擬似位相整合素子を利用。素子の材料は、独自に研究開発した定比組成タンタル酸リチウムを用いることで安定した量子もつれ光子の発生が実現されている。
実験では、擬似位相整合素子から発生させた、波長660nmから1040nmという超広帯域量子もつれ光子対を用いて、従来の光断層撮影法で用いられる低コヒーレンス干渉、および量子光断層撮影法で用いられる2光子量子干渉を、今回開発した高安定高精度干渉計を用いて実施した。
この結果、世界記録となる、0.54μmの分解能に相当する量子干渉縞を実現。これは、従来の光断層撮影の原理検証で記録されていた世界記録である0.75μmを超える値となっている。
今回の成果により、光断層撮影技術の分解能の飛躍的な向上が期待され、今後は緑内障の早期診断など、医療分野をはじめとするさまざまな計測技術への波及が期待される。