日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネージャー 伊藤敬氏

日本オラクルは11月25日、プレスを対象に、10月に米国サンフランシスコで開催されたJavaに関するカンファレンス「JavaOne 2015」で語られたJavaの最新動向について説明した。

初めに、クラウド・テクノロジー事業統括 Fusion Middleware事業統括本部 ビジネス推進本部 シニアマネージャーの伊藤敬氏が、JavaOne全般、Java SE/EEの最新動向について説明した。

今年はJavaの生誕20周年ということで、JavaOneでも華々しくお祝いが行われたようだ。基調講演には、Javaを開発したサン・マイクロシステムズの創業者のスコット・マクニーリ氏がビデオで登場し、会場を沸かせたと聞いている。

伊藤氏は、Java全般の最新動向として、活動するコミッターの増加を挙げた。コミッターの数は2010年から136%増となっており、一般の開発者の貢献が増えているという。加えて、Javaの仕様をまとめる「Java Community Process(JCP)」の参画も拡大しており、これまで営利団体は年会費5000ドルが必要だったところ、会費を免除することが仕様で策定中とのことで、営利団体の参画の拡大が期待される。

例年、JavaOneでは、Javaの各エディションの開発状況が公開される。Java SEについては、2016年9月のリリースが予定されているバージョン9の特徴について説明が行われたそうだ。

Java SEの開発ロードマップ

「Java SE 8は関数形分法と並列処理が導入されるなど、Java自体の機能拡張に重きがおかれていた。これに対し、Java SE 9では、モジュールの導入やモノリシックの脱却を目的としており、Java自体を整理することを目指している」と、伊藤氏はJava SEの進化の方向性について述べた。

Java SE 9で行われているモジュールの導入は「Project Jigsaw」と呼ばれている。パッケージの上にさらにモジュールというプログラムを導入することで、Javaのプログラム構造の変更を実現する。モジュールによって、パッケージのアクセス制御を実現できるほか、モジュールの相関関係を多重化できる。

「Javaはこれまでプログラムが複雑になればなるほどパッケージが増えていく傾向があったが、モジュールを活用することでパッケージの数を減らすことができる」(伊藤氏)

Java SE 9で導入が予定されているモジュールの導入効果

また、伊藤氏はJavaOne 2015のセッションにおいて目立ったトピックとして「DevOps」と「Microservices」を紹介した。

DevOpsは、450セッションのうち107を占めるという状況だったという。ちなみに、昨年のJavaOneでは、7つのセッションしか開かれなかったそうだ。伊藤氏は、「各セッションでは、開発・テスト・デリバリーを繰り返すフローを自動化することについて語られていた」と説明した。また、テストの自動化や定量的な評価についても、言及されていたという。

そして、DevOpsの先にあるのがMicrocervisesとなる。「DevOpsによってシステムが開発されるようになると、作るものは小さいほどよい」と、伊藤氏は話した。今後の注目点としては、「小型で軽量な実行環境」の登場が挙がっていたそうだ。

Java Embedded Global Business Unit マスター・プリンシパル・セールス・コンサルタント 宇野浩司氏

Java Embedded Global Business Unit マスター・プリンシパル・セールス・コンサルタントの宇野浩司氏からは、組み込みJavaにおけるIoTの取り組みについて説明が行われた。宇野氏は、「IoTにより、デバイスに"インテリジェンス"と"セキュリティ"が求められるようになった」と述べた。

IoTソリューションでは、自律性とストリーミングデータの処理が必要となることから、クラウドサービスを介して、エッジデバイスとアプリケーション/サービスがつながることになる。そこで、エッジデバイスとクラウドをつなぐJava開発者のビジネスチャンスが増大するという。オラクルとしては、Java ME Embedded 8によって、インテリジェンスなデバイスの実現を目指す。

Java MEの開発ロードマップ

また、IoT関連のセキュリティのトピックとしては、自動車に関するセキュリティが紹介された。これまで、BMW ConnectedDriveがハッキングされる危険性、高速道路でハッカーがJeepの運転操作を制御したことなどが報じられているという。

宇野氏は、自動車を取り巻くセキュリティ環境について、「脆弱性の数は少なくない。ITベンダーから見ると、初期段階にある。"すべての車で同じ暗号鍵を使用""暗号化に対応していないメッセージがある"といった課題を解決していく必要があるだろう」と説明した。

加えて、暗号鍵がいかに盗まれないかが重要であり、それを実現するカギとなるのが「ハードウェアから直接アクセスすることを回避すること」とした。そうした状況に対し、Java Cardがタンパー性を備えたハードウェア上でセキュリティ・プラットフォームを提供するという。

DevOpsやIoTなど、新たなITトレンドが登場するなか、Javaも進化を続けている様子がうかがえた。